非日常が日常です(完結)
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「最初は興味本位だった……というか、うざかったんだよね」
「うわー何か語り出したよ、この兄ちゃん」
『おい、田村。その恰好どうにかならないのか! 服装検査で前引っかかってただろ』
『そうだっけ? よく覚えてないなぁ』
『クソ! お前がそうだと俺も怒られるんだぞ! 幼馴染なだけで!』
『はいはい、ごめんね』
幼馴染だかなんだか知らないが、いつまでも付きまとう藤堂にいい加減嫌気が差した。
だからこれは、ただの嫌がらせであったのだ。
今まで試した相手は、催眠中の命令はよく聞いてくれるのに、”これ”はほとんどの確率で効くことはなかった。
『藤堂の好きな子だ誰だ』
『好きな奴はいません。部活で精一杯です』
『青春無駄にしてるなぁ。んじゃあ、通常の状態に戻った時にオナニーが好きになる。これで少しは高校生っぽくなるかな……って冗談』
『はい』
『え、え!?』
まさかそんなことがあるはずない。
かなり極端な命令をしたはずで、少しでも拒否する心があれば返事をしないわけで。
混乱を極めたが、返事をしてしまったのだから仕方がない。結果を見守るしかなかった。
――馬鹿正直過ぎて拒否することも思い付かないとか? 幼馴染の俺だから……ってのはないか。
理由はどうあれ、良い事を知った気がする。
田村は暴走を始めた。
藤堂が突っかかるたびに命令をかけ、面白い程頷いてくれることに快感を覚える。
『オナニーはちゃんとしてる? いや、今はアナニーだっけウける!』
『はい、一日置きにしています』
『こんな巨体が一人でシてると思うとね。あと何だっけ、家では可愛いエプロン付けて料理して、ドMにもなってんだよな』
あとはどうしよう……ふと、考えがよぎって口に出してしまった。
『俺のこと好きで好きでたまらなくなるとか……それならもう毎日五月蠅く言われないし』
『はい』
『よっしゃ! 頷いた。これで平穏だな』
その考えは甘かったと盛大に後悔することになる。
次の日、晴れやかな気持ちで学校へ行こうと自宅を出たところで藤堂が待ち伏せしていた。
『え? 何で?』
『と、とと通りがかっただけだ! お前を待っていたとかはないからな!』
『あっそ……』
――ツンデレは可愛い子がやってなんぼだろ!
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