[携帯モード] [URL送信]

非日常が日常です(完結)
6



「せっかくだから野原にもかけといてやろう、お土産だ」

CDラジカセの横に立つ野原へ振り返った平田はこう指示した。

「野原、通常の状態に戻った時俺たちと普通に別れるが、そのポケットに入っているハンカチは木下が寝ている時にこっそり涎や汗を拭きとった物だ。それをオカズにして今日はオナニーしろ」
「はい」
「うは、返事した。やっぱこいつ変態だ」
「平田お前えげつない」
「平気だよ、実際ハンカチには木下の汗とか付いてるだろうしこいつも望んでるから返事したんだし」

ここでやっと満足して「目を覚ませ」と終了の言葉を放つ。
するとまるで時間が動き出したかのように生気が戻った木下は「もう遅いから帰ろうぜ」と笑顔で言ってきた。
一方野原はどこかぎこちない。

「三人で最後だからな、着替えたなら早く帰りなさい」
「はーい」

生徒たちが帰るかどうか確かめもせずそそくさと教室を出てしまった。
木下は不思議そうに首を傾げていたが、残りの二人は気が付いたら勃起していたことに慌てて出ていったのだろうと思い当たる。
それは生徒に見つかったらまずいだろう、同じ男として気持ちが分からないではない。

三人で今日の部活のことやテレビ番組の話など他愛もない話をしながら校門を出る。


平田は鞄に入っている本を確かめるようにその部分をぽんぽんと叩きながらにんまりとした。
こんなものが手に入るなんて思ってもみなかった、そしてそれは驚く程の効果で。
横で笑う木下が先ほどまで自分たちに裸を晒していたなど、今こうして話していると信じられない。

最初は冗談のつもりで、相手を木下に選んだのもちょっと劣等感からからかおうと思っただけだ。
しかしこうもうまくいくなら利用しないでどうするか。

本当はこのまま木下を家に連れ込んでいろいろと命令したいと思う平田だったが、さすがに時間も遅いので今日は諦めることにした。

学校から一番家の近い木下と別れ平田と大崎は帰り道を歩く。

「なあ、平田ん家でそのCDの音源落とさせてくれよ」
「なるほど!落としときゃどんなとこでも催眠出来るもんな。それなら本返却したって平気だし」
「だろ?」

大崎の提案に賛成した平田は家ですぐに音源を落とした。
その後にまにましながら夕飯を食べていると「だらしない顔して」と家族にツッコまれたが、今の平田はそんなことも気にならない。
部屋に戻ってからは本の内容をじっくり読み込み、気が付けば日付が変わっており急いでベッドに潜り込んだ。

今日は良い夢が見られそうである。



「おーっす木下ァ」
「平田!おはよう」

昨日あんなことがあったにも関わらず、木下は今日も爽やかだ。知らないとは恐ろしい。
平田は平田で、木下の全てが自分のものと思える今は木下がどんなに皆に好かれようと全く嫌な気分にはならなかった。
すでに登校していた大崎もにこにこ笑っている。

他のクラスメイトとも会話をしながら教科書を机に入れているところにドアが開き野原が入ってくる。
教卓の前に立つ時にちらりと木下を探す仕草に笑い出しそうだ。
きっと昨日の自慰を思い出しでもしたのだろう。

「やっぱキメェなあいつ」

今日は帰りに木下を呼ぶ前に一つ実験をしようとしていたが、野原ではさすがに木下が可哀想だと取りやめることにした。
見た目も普段の性格も平均よりは上なはずなのに、平田の中で野原の印象は最悪なものになったらしい。

しかし実験はしたい、誰か見繕わなければ。

どうせならなるべく見目が良い方がいい。

――時間はあるからゆっくり考えるか。


そう思いながらも適当な人物が見つからずに一日が終わっていく。
クラスの何人かで昼食を取り、放課後になればいつものように部活。

「おつかれー帰るべ」
「俺本図書室返しに行く」
「もう返すのか」
「読んだし音源取ったしな」
「平田本借りてたんだ、じゃあ皆で行ってそのまま帰ろ」

例の本は本当は手元に置いておきたかったものの、図書室の本ではそうもいかない。それならばまた返却日が過ぎて慌てることのないようさっさと返すことにした。



[*前へ][次へ#]

7/11ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!