非日常が日常です(完結)
3
田村の所為なのはもうどうでもいいとして、ともかくこのガチムチを一刻も早くどこかに放り投げてほしい。
そう思っていたはずなのに、田村を始め修也、平田、大崎の四人は何故かガチムチの家へ招待されていた。
「智君はブラックで、皆はジュースでいいか?」
「お、おかまいなく……」
ジュースはいらないから一刻も早く帰りたい。
「お、そうだ。修也君ちょっと」
田村に肩を叩かれ振り向く。一瞬の内に修也の動きが止まった。
「あ、それ」
田村の手にはイヤホンが握られていて、それを修也の耳に当てたらしい。
分かっていたことだったが、実際田村が催眠CDを使うのを見て、自分たちの秘密ではないことを再認識する。
「修也君に聞かれるとまずいこともあるからね。修也君、手を叩いたら普段の修也君に戻るけど、これから会話する内容はどんなことでも不思議に思わない。OK?」
「はい」
手慣れた様子で催眠をかけて手を叩く。
パチパチ二三度瞬きしただけで、いつもと変わらない修也に戻った。
「とりあえず、そいつの話だっけ。平? えーと、大阪? あれ?」
「平田と大崎! 何で名前覚えてないんだよ、実習担当のクラスだろ」
「はは、人の名前覚えるの苦手でね〜」
ふざけているが、本当に覚えていなさそうだ。
好みの相手しか覚える気が無いとは、曲がりなりにも教育実習生をしていた者の科白だろうか。
「てか、そこのガチムチさんはこのままでいいの?」
「大丈夫、もうそいつ何してもダメ。諦めた」
「智君、ダメとか言うなよ。俺との仲だろ」
「キモイこと言うな。あっち行ってて」
「はあい!」
若干上ずる声が生々しくて背中に寒いものが走る。
買い物をしてくると部屋を出ていったガチムチを置いて話が進んだ。
「あれよあれ、催眠で、”通常の状態に戻った時”っていう命令あるじゃん?」
「あー……でも、少しでも抵抗する気持ちがあったらかからないんだろ」
「そうなんだけど、おかしくない程度の命令を少しずつしていったらどうなるか試してみてさ。ああなった」
「うおっえげつねぇ!」
「いやぁ、それでも普通はかからないんだよ。他の奴に試した時は効かなかったし。だから、元々才能あったんでしょ。ノンケのクソ真面目が、今は頭の悪い処女ビッチ。掘ってほしいって迫ってくるけど全然好みじゃないし、さすがにノンケだったから俺にしか興味無いらしくて困ってて」
「人一人の性癖変えといて困ってるはねーだろ!」
「あはは」
「照れてんじゃねー!」
やはり変態は昔から変態だった。
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