非日常が日常です(完結)
2
「あ……ううん。どうしよう」
知り合いそうな話し振りではあるが、知り合いかどうかは分からない。
今日まで教師という立場の人間をこの男に話してしまっていいものか修也は悩む。
「こ、個人情報的に大丈夫かな?」
「いいよ、絶対あいつの知り合いだよ。ヤバさ的に」
「ほんとほんと。同じ匂いを感じる」
「知ってるのか? どうなんだ? あ?」
服装と顔面のギャップ甚だしい。
「えーと、知っているというか何というか」
「つまり、知ってるってことだな? 俺の予想ではここを通るんだ、俺のセンサーが反応しているんだ智彦のことは俺が一番」
にじり寄ってくるガチムチがガチ過ぎてもうあれだ。
明らかに変態の域に達している男にぎゅうぎゅう掴まれ苦しそうな修也を、二人掛かりで助け出そうと試みるもびくともしない。
このガチムチ、只者ではない。
そこへ、偶然かガチムチのセンサーが正しかったのか、本当に田村がやってきた。
「キモイ」
「智彦さーん!」
「げえっ来た! というか、今ばかりは助かった!」
「田村せんせー助けて修ちゃんがヤられる!」
修也の前では見せない素の顔で田村が登場する。
ガチムチを見た瞬間、盛大に顔を歪めたのだ。田村のお仲間だと思っていた平田たちは不思議がる。
「あんたの知り合いなんでしょ?」
「え、ああ、うん、そうだね。そうなんだけど、キモイね」
「ひどい! 智くぅんッ」
「うわキモ! ギャップ萎え」
「五月蠅いぞガキ! 俺は智君と話してるんだ」
「こ、怖えぇええ!」
「とりあえず、修也君から離れようか」
べりっと田村が修也の腰を引き寄せ、ガチムチから引き剥がす。
「ほんと、このガチムチ誰」
平田が尋ねると、田村はくるりと目を一周回してから、ぽそりと言った。
「俺の高校の時の同級生。本来なら堅物なクソ真面目だったんだけどね、どうしてこうなったんだか」
「そうなんですか……大学入ってから変わっちゃったとか?」
「大学デビューってひどいデビューだな」
「いやまあ、俺が原因なんだけど」
「結局お前の所為かッ!」
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