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非日常が日常です(完結)
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幸か不幸か、ちょうど効果が切れる一時間が経過しており、病院に行く前に元に戻ることが出来た。
もし診察の最中に戻ったとしたら、羞恥で悶え苦しんだことだろう。

「修也、何歳だ!」

「え? ……と、十七歳だけど」

「うおお!」

普段あまり起伏の激しくない大熊がガッツポーズをするのを見て、珍しいものを見てしまったと思う。
余程良いことでもあったのだろうか。

「志信君?」
「ああ、こっちのことだ。気にすんな。帰るか」
「うん」
「どうせだから俺の車で帰ろう」
「やった! ありがとう」



高校に上がって教師と生徒という立場になったため、大熊の車に乗ることも滅多に無くなった。
何故今日だけはいいのか分からなかったが、せっかくのお誘いを有り難く受け取っておく。

鞄を持って大熊の後に続く。

そこで修也が唐突に思い出した。

「あれ? 俺、確か友だちといたはず……しかもこんな時間だったっけ?」

考え込む修也に、慌てた様子で誤魔化す大熊。

「これはだな、あれだ! 俺が用事があるって修也を連れて来たんだよ。そしたら具合悪いからって保健室で休むことになって……だから時間が曖昧なんじゃねぇか?」

「志信君が? そうだったっけな……」

「そうだよ! こ、これから家来るか? 美味いスイーツとかいうのをお袋が取り寄せたとか言ってたから食うか」

「スイーツ……食べる」

「なら早く行こう!」

何となく丸め込まれた気がして返答したもののうんうん呻る修也を、車に押し込んで素早く発進させる。

「体ダルいとこねぇか? 頭が痛いとかどっかぶつけた気がするとか」

「いや、何もないよ」

やはりどこも怪我をしていないらしい。
こうして元に戻った姿を見ていると、三歳の修也は大熊の夢であったようにも感じてしまう。

――それじゃ、あれが俺の願望みてぇじゃねぇか。

ふるふる、首を振って考えを否定する。

修也のことは好意を持っているが、決しておかしな性癖は持ち合わせていないはずだ。

「せっかくだから今日家で飯も食ってくか?」

「ほんと! お母さんに聞いてみるよ」

自宅へ電話を始めた修也を見て、やっと現実に戻ってきたことを実感して安心した。

「お母さん大丈夫だって。ごちそうになるね」
「おう。まあ、作るのは俺じゃねぇけど」



「家族以外の手料理なんて、智彦さんのくらいしか最近食べてなかったから久々だ」

「は? 智彦?」

「今教育実習で来てる人。ちょっと前に知り合ったんだ」

「そう、そうか……手料理食ってる、ね」

大熊の抹殺リストに田村が加わったとかいないとか。



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