[携帯モード] [URL送信]

非日常が日常です(完結)
4



「ん〜んん〜」

上機嫌の修也が誰もいない廊下を鼻歌混じりに歩いていく。

ここが何処かは理解出来ていないが、それよりも好奇心が優って彼を突き動かしているらしい。
窓から外を見たり、教室のドアを開けてみたりしている。

「何処かなあ、幼稚園じゃないし。慎也もいないねー」

つい最近入園した幼稚園を思い浮かべてみたが、大分様子が違うため首を傾げる。
遊びに来たのだとすれば、いつも弟の慎也と手を繋いでいるのに慎也もいない。
そこで気が付いたが、母もおらず自分一人だ。

「どうしよ……迷子なっちゃった。さっきのお兄ちゃんと一緒にいればよかった」

「ふえ……」大きな瞳に涙が溜まる。

しかし、三歳と言えども男の子。必死に涙が零れるのを耐えながら、これ以上うろうろするのも怖くなってその場に蹲った。
ふいに上から声がする。


「どうしたんだ? 文化部以外はもう下校時間に」

「だあれ」

見上げた修也の顔に驚き、声をかけた教師は言葉を失った。
お約束の不幸な男、野原である。

「しゅ、木下? どうした泣いて、誰かに何かされたのか!」

目を覆って俯く修也を立たせて肩を揺する。
ふるふると首を振る姿に「きゅんっ」となるも、学校という場のため気持ちを抑え込んで聞いた。

「それなら、どうしてこんなところに一人でいるんだ?」

優しく聞いてみれば、やっと修也が顔を上げてくれる。うるうるな瞳だ。

「お兄ちゃん、だあれ? 迷子なっちゃった」

「ん? あれ、もしかして」

明らかにおかしな言動をする修也に、野原はあることを思い出す。
つい先月、自分のクラスの男子たちがふざけて修也に催眠術をかけたと言ったことがなかっただろうか。
これはもしかしてもしかしなくても。

「木下、どっか頭とかぶつけてないか」
「ううん、ぶつけてないよ。大丈夫」
「しゅ、修也君。今何歳かな?」
「三歳だよ! 見て、三って出来るようになったの」

自信満々に指で「三」を作ってみせる修也に鼻血が噴き出しそうになる。

――何だこれ何だこれ、可愛すぎるヤバい犯す犯していいかな? 大丈夫だよな? うん、大丈夫って言ってる!

野原の中の天使と悪魔が葛藤することなく、結論が即決された。



[*前へ][次へ#]

4/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!