非日常が日常です(完結)
5*微
「平田どうすんだよ」
「まあ見てなって。おい木下、今から手を叩くとお前は意識が戻るが俺たちのことは見えない。んでもう一度叩くと催眠状態に戻るんだ」
「はい」
「野原、お前も手を叩くと意識が戻り俺たちのことは見えない。告白しろっつっても普通の状態じゃ出来ないだろうから、意識が戻った時お前は興奮状態になる。これなら出来るかな、それでもう一度叩くと催眠状態に戻れ」
「はい」
「なるほど、これなら練習にはなるな。全部終われば何も覚えてないわけだし」
「な?このキモい思考の野郎がちゃんと告れるかは分かんないけど」
平田は一度大きくぱんっと手を叩いた。
木下と野原はびくっと体を震わせてきょろきょろと辺りを見る。いきなりの状況に脳が付いていかれないのかもしれないが、瞳に光は戻っていた。
「あれ?野原先生だ」
「き、木下」
命令通りお互いしか見えていないようで、すぐ傍にいるはずの平田たちには目もくれない。
野原は息を荒くしながら木下の肩を両手で掴む。木下は違和感を感じて一歩後ずさった。
「何ですか」
「好きだ」
「へっ」
「木下が好きなんだ、付き合ってくれ」
「えっで、でも俺男だし生徒です、けど……」
「それでも好きなんだ!」
「うおー言ったぁ、速攻で告ったね」
「さすが興奮状態、でもぐんぐん来る告白引くわー」
平田たちは呑気に机の上に座りながら二人の様子を見て実況する。
「あの、ごめんなさい」
「だよなー、でも罵倒しないのは木下らしいっつうか何つうか」
「修ちゃん優しい、でもホモじゃないから断るわな」
野原は木下の返事に俯き黙っている、掴まれたままの木下はどうしたものかと困った顔をしていると、急に野原が震え出した。
「じゃあ一回だけ!いいだろ?」
「何?一回って」
「ヤらせてくれよ、な!痛くしないから!」
「えっやだっ誰か――っんぐうっ」
瞳の変わった野原に恐怖した木下が大声を上げようといたが、すぐにハンカチで口もとを押さえられ声が出せない。
そして暴れる木下を野原は体全体で押し込み壁と挟んでまともな抵抗が出来ないようにさせる。
「すげーホモの本気!」
「覚えてたら修ちゃんトラウマになりそうだな」
「ふっんんっ」
「大丈夫だから、修也、修也ァ」
野原は片手で服の上から木下のモノをがっと掴んでやわやわと揉みだした。
木下の瞳に涙が滲む。
「んっ……」
「はぁ、修也可愛いな」
「あっ野原の奴勃起してんぞ、学校なのに」
まさかの事態に平田と大崎は固まるが、すでにここまでいろいろなことをさせたり聞き出したりしていて感覚が鈍っており今更止める気はない。
しかしそんな時。
「あ!一時間!」
「は?どしたよ」
「指示しなくても一時間経ったら元に戻っちゃうんだよな。修ちゃんもうすぐじゃねぇ?下校時刻も過ぎてるし」
「やべーすっかり忘れてた。まだ十分はあるな、危なかった」
ぱん、と平田が叩くと二人の動きが止まり瞳からまた光が失われた。
そして元の場所に戻って身支度を整えるように命令すると、のろのろと動き出したのでひとまずほっとする。
「あーっと今戻しても修ちゃん変に思うよ」
「それじゃあ戻した後の命令しとこう」
「あれ、常態性ないんだろ?」
「ああ、あとで命令は出来ないんだけど今命令しておけば効くらしい」
「おー便利!さっそくかけよう」
「木下、”通常の状態に戻った時”お前は時間が経っていることも野原がいることも気にならない」
「はい」
「これでいいか。そうだ!木下、通常の状態に戻った時野原に恋愛感情を持つ」
「はっ?平田何言ってんだよ」
「…………」
「いいからいいから、面白いじゃん。後で取り消せばいいし……って返事しねーな」
間違えたかと本を取り出して補足部分を読み直す。
「あった、ここか」
補足.目を覚ました後も命令を続行したい場合は、「通常の状態に戻った時〜する」という命令を催眠時にかけておくと有効である。ただし、相手が命令の内容を少しでも拒否する気持ちがある時は無効となる。
「なるほど、嫌な命令は効かないか。そりゃそうだよな、催眠時じゃない時も好きな命令出来たらほんと好き放題出来ちまうもん」
「そこまではうまくいかないってことか」
「つーことはこれで完全に野原はフラれたってことだ。嫌だからかからないわけだし」
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