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非日常が日常です(完結)
野原先生の日常



「はあ〜……」

職業高校教師、年齢二十七歳、独身。
野原晴美は休日であるのに昼間からため息を吐いて自室で項垂れていた。

理科の教師らしく本棚には授業関連の参考書にサイエンス雑誌、それと交じって漫画がある程度である。

それよりもはるかに目立つのは部屋を埋め尽くすように貼られた写真たちであろう。
しかもよくよく見るとその写真たちはほとんど一人の学生が写っている。

どうやら純粋に自分の生徒たちの写真を飾っているわけではなく、一人の生徒を中心に貼っているらしいそれは完全に他人が見れば「常軌を逸している」と軽蔑される程だ。


「今日も可愛かったなあ木下……」

そう、意中の生徒は木下修也と言い、この部屋中に貼られた写真の主である。

もちろんこの部屋の状況は修也は知らない。

ましてや担任である野原が好意を寄せているなど思い付きもしないだろう。

せめて二人が恋人の関係にあればこの状況も百歩譲って許されるであろうが、一方的なこの想いはもうストーカーの域である。
写真もほとんど目線が合っていないので隠し撮りなのだろう。
または遠足などの写真をこっそりと買って飾っているものもある。

これらが正常とは言いづらいものであることに気が付いていないのも、彼の行動をエスカレートさせている要因の一つだ。

「そうだ」

今日手に入れた新しい戦利品をいそいそと取り出す野原。

なにせこの戦利品は絶対に手に入らないであろう貴重な一品だ。
そして取り出されたのはボイスレコーダー。

どうしてそんな状況になったのか、教え子たちが催眠術ごっこをして修也がかかってしまったらしい。
解き方を調べる間野原が見ていたのだが、つい出来心で修也から言ってほしい言葉を言ってもらいさらには録音してきたというわけである。


『野原先生好きです』

「うっ……」

これはまずい。今の一言で大事なところが成長してしまった。

野原は引き出しからいつぞやのハンカチを取り出していそいそと一人遊びにしばし励むことにする。
いつもより強い快感に流されながら今日学校での修也を思い出す。

もしも、またあの状況で二人きりになれたら――自分は何をしてしまうだろうか。

むしろこのままいってしまったら、催眠がどうのとは関係無く何かをしでかしてしまいそうで怖い。

「どうしよう、今年は修学旅行もあるのに」

野原が受け持つ学年は二年なので修学旅行がある。
もちろん引率はするし、夜の見回りで自分のクラスの部屋くらいは回るだろう。
いろんな意味でおいしい機会が多々あるのだ。

理性の限界を試されているようで頭を抱えるしかない。

野原が無事手を出さずに修也を卒業まで見守れるかどうかは……野原自身でも分からないところである。




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あきゅろす。
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