非日常が日常です(完結)
7
「寝よっか」
「うん」
体は疲れ切ってしまったが、どこかすっきりして二人とも眠りにつくことが出来た。
携帯の目覚ましが遠くから聞こえる気がする。
いつもであれば枕元に置いてあるはずなのに、昨日はそうしなかったらしい。
手を伸ばしても携帯らしきものには当たらないので、届かない程遠くなのだろうと止めるのは諦めた。
まだ眠っていたい体をそのままに瞼だけをこじ開けると違和感を感じた。
「あれ、俺の部屋じゃない」
ぼーっとしているが部屋の雰囲気が自分のものでは無いことは分かる。
ただ、まだ体がダルイので、それでもいいかとごろんと寝返りを打つと真横に何故か弟がいた。
「慎也……の部屋かここ。いつの間に入り込んじゃったんだ」
考えるが昨日の記憶がはっきりせず思い出そうとすると、そういえば自分がとんでもない質問をしたところまで思い出した。
ぼっと顔が赤くなる。
あんなことを突然言ってきっと慎也はおかしく思っただろう。
しかしこうして一緒に寝ているのであればあの質問を許してくれたということだろうか。
この前一度一緒に寝てみたが、やはり小さな頃を思い出して同じベッドというのは嬉しくなる。
もう高校生でこんなことを思うのは少々恥ずかしいものの、家族と一緒というのは良い。
「……修君?」
「おはよ、慎也の部屋で寝ちゃったんだな」
「ああ、いいよ。それより解決したからもう平気だろ」
「解決……ってあれか。俺途中までしか覚えてないんだけど迷惑掛けてないか?」
「大丈夫、ちゃんとイけてたし」
「そうか、肝心なところ覚えてないな。でも、迷惑掛けたみたいでごめん」
視線を彷徨わせながら謝る。
焦ったとは言え、あんなことを弟に言ってしかも結局手伝ってもらったとは兄として恥ずかしい。
「いいよ」
「う……なんか今日は立場逆転だ、俺より大人に見える」
落ち着いている慎也にそんな感想を持つが、慎也の心は思ったより穏やかなものではなかった。
今回は酔っていたとは言えある意味合意の上での行為だ。
しかし、余計に修也への気持ちを自覚してしまうものでもあった。
こうなっては自分自身を偽ることは出来ない。
家族で、男の、目の前にいる修也を恋愛対象で見ている。これは確かなことだった。
慎也は軽くため息を吐く。
もうこの気持ちとは付き合っていくしかないようだ。
恐らくは一生伝えることは無いだろう。
それでも大切にしたい。
「修君、俺お腹空いたから朝ごはん食おうぜ」
「いいよ。トーストにハムでいっか」
「んだな、お母さんいないし俺らはそれが限界だ」
修也の笑顔に満足する。
部屋を二人で出ていく時にちらりと慎也は振り返った。
視線の先は机の引き出し、例のストップウォッチが入っている。
しばらくこいつの出番も無さそうだ。名残惜しそうに慎也は廊下にいる修也に続いてドアを閉めた。
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