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東方炎龍伝
偽物の英雄 幽香side
「随分と久しぶりじゃない英雄さん?」

私は向かい側で座りながらコーヒーを啜っている目付きの悪い紅髪に嫌味ったらしく言った。

「おいおい・・・英雄は止してくれ。俺はお前を討伐なんかしてないだろ?」

彼は苦笑いしながらそう答えた。

「ええ、そうね。貴方は私を倒していない。それどころか戦う事すらしなかったわ。今更になるけど何故?」

これは私が今までずっと疑問に思っていた事。
もうどれくらい前だったかは忘れてしまうくらい昔の話。

「あの時のJDASUは腐ってたんだよ。ありもしない事を捏造して手柄を上げようとした上官共が気に食わなくてな。」

コーヒーカップを置いて話し始めた彼の表情は嫌悪に満ちていた。

「捏造?」

「ああ。当時討伐された妖怪の殆どが冤罪だった。まあ、下っ端は何も知らないから気にもせずに任務を遂行していったわけだ。」

「その言い方だと貴方は知ってたのね?」

「まあな。俺は上の連中のお気に入りだったからそういう類の情報も持ってたんだ。」

なるほどね・・・。
私を討伐しなかった理由は冤罪で討伐命令が出ていたのを知っていたからなのね。

「大体予想はついただろ?此処に来るだけ来て任務は放棄したんだ。報告書やレポートは全部捏造して提出した。」

「貴方も上官と同じ事をしたのね。それなら彼らと変わりないわよ。」

「そうだな。お前の言う通りだ。だが、『やられたらやり返す。』それが俺のやり方だ。一方的にやられるだけじゃ不平等だぜ。だから、奴らと同じように見られようが構わねえ。」

この男は・・・。

「面白いわ。最高よ。これだから獄炎、貴方は嫌いになれない。」

この男は初めて会った時からこれだ。
自分が納得する為にプライドの欠片も無い行動を取る。

「勝負事にプライドや正々堂々なんて言葉は必要ない。クソ真面目に勝負する奴は殺し合いに向かないんだよ。分かるよな幽香?」

「それぐらいはね。卑怯汚いは敗者の戯言。結局は狡賢く戦わないといけないのよね。」

「ああ。俺は侍や競技者じゃない。正々堂々が大嫌いなはぐれ者の兵士さ。」

彼はそう言ってニヤッと唇の端を持ち上げた。

「貴方ほど英雄という言葉が似合わない男はいないわね。」

本当に色々な意味で偽物の英雄だわ。

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