短編集
*甘く、甘く。
「レン」
呼ばれて振り返れば、見慣れた緑の髪と、いつも少し気だるさを混ぜたような笑みを浮かべる、長身の青年。
「クオ兄…」
そう、この人こそ、俺の愛するクオ兄―ミクオだ。
しかし、今日はいつもと違い、無表情に近くなっている。
大抵こういう時は、イライラしてる時。
「何かあったの?」
「っ!!……いや、別に」
直球ストレートな質問に一瞬焦っていたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
クオ兄は、俺の座る位置の反対にあるソファに座り、黙り込みを貫き通す。
部屋に落ちる、沈黙。
俺もクオ兄も、口を開く事はなかった。
しばらくし、沈黙に耐えきれなくなったのか、クオ兄が話し始める。
「レン、」
「何?」
「隣、おいでよ」
「嫌だ、って言ったら?」
からかい気味にそう言うと、クオ兄は無言でソファから立ち上がり、俺の方へ歩み寄ってくる。
そして、俺の腕を掴み、キスをする。
舌が口の中へ入り込み、中を掻き回す。
寒気が、背中を走り抜ける。
息が出来なくなる程長いキスの後、俺は床へと倒される。
「床は背中が痛いんでしょ?」
「…やっぱりこれが目的だったのか…」
少し呆れながらこう言うと、クオ兄は、
「だって、レンが大好きだから」
「………」
「…いい?」
「……ソファの上なら」
渋々ながら承諾すると、クオ兄は俺を抱え上げ、ソファへと運ぶ。
ゆっくりと、俺をソファへと降ろすと、またキスをする。
キスの後、クオ兄は俺の耳元で囁く。
「レン、愛してるよ」
彼の甘い甘い囁き。
聞く度に、脳がとろけそうになる。
(こうやって、いつもクオ兄に負けるんだよな…)
そんな事を考えながら、
彼に聞こえないように囁く。
「俺も、クオ兄の事愛してるよ」
俺は、また彼に溺れていった。
end.
お前らとりあえず落ち着け。
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