04
「じゃあ、先に1点とった方が勝ちね」
私はそれだけ言うと、自分のポジションに戻る。
「風丸!宮坂!私がシュート決めるから、パスお願い!」
「わかった!」
「任せてください!」
「守もゴール頼んだよ!」
「おう!」
そして、私達のキックからバトルはスタートする。
「風丸!」
「宮坂!」
私から風丸、風丸から宮坂とパスがつながる。
「ナイスパスです!…うわぁっ!」
宮坂がドリブルをして進もうとすると、ラグビー部の1人がスライディングをしてボールを奪った。
「楽勝〜っ!」
ボールを奪われたのがちょうどゴールの目の前で、すぐさまシュートをうたれる。
「守っ!」
「ゴールは絶対決めさせねえ!」
バシッ!
けっこう強力なシュートだったが、守は難なくキャッチしてみせた。
「守!ナイスセーブ!」
「よし!反撃だ!風丸っ!」
守から風丸にボールが渡ると、風丸はスゴい速さで1人かわした。そのままドリブルをして、私にパス。
…目の前には、敵が1人。
私が女だからか、ニヤニヤして余裕そうに構えている。
「…っ、女だからって甘く見てると痛い目みるよ!」
ポンッと軽くボールを蹴り、俊敏な動きで相手を抜く。こちらに突っ込んできたラグビー部の頭の上をふわりとボールが通り、私の足元へと落ちてきた。
そのままゴールへと一直線だ。
「くらえっ!」
力の限り蹴り放ったボールは、キーパーの手にかすることもなくゴールに突きささる。
「やったあぁぁー!勝った!」
「譲、やったな!」
嬉しくて風丸や宮坂、守とハイタッチをする。
すると、顔を悔しそうに歪めたラグビー部員達は声を荒げて詰め寄ってきた。
「フン…弱いものイジメも飽きちまったぜ。今日はオレ達ラグビー部がここを使うことになってんだ。いい加減どきやがれ!」
「2人でやるサッカーなんて聞いたことねえぜ!オンボロ部室に帰って部員達と遊んでな!」
「くそっ、言わせておけば…」
守がぐっと拳を握り、一歩前に出る。
「何、負け惜しみ?負けといてカッコ悪いね」
もちろん私も腹が立ち、フンと鼻で笑ってやった。
「落ち着けよ円堂、譲も挑発するな!」
そんな私達を見かねてか、風丸が止めに入ってくる。
「…どうやらあいつらがグラウンドを予約してるのはホントみたいだ…。悔しいがこれ以上騒ぐと俺達が不利になるだけだぞ…」
「…っ」
なんで、なんで。守はこんなに頑張ってるのに、馬鹿にされるんだろう。
悔しくて無意識に唇を噛みしめていた。
「円堂くん!風丸くんの言うとおりだよ!ここで何かあったらまたグラウンドが使いにくくなっちゃう…!」
騒ぎに気がついたのか、秋がこちらに走り寄ってきた。彼女はサッカー部のマネージャーで木野秋。とても可愛いし、よく気のつくとてもいい子だ。
正直サッカー部なんかにはもったいないと思う。
「おっと、マネージャーさんの登場かよ。いいねえ、弱っちくても可愛い女の子が守ってくれて」
「とにかくさっさと出ていきな!練習の邪魔なんだよ!」
ラグビー部員がさらに追いうちをかけてくる。
「くっ…」
私達は仕方なくグラウンドを後にした。
…守、すごく悔しそうな顔してる。あんなに馬鹿にされたんだから、当たり前か。
昇降口の前にくると、風丸が申し訳なさそうに口を開いた。
「すまない、円堂。俺たちも練習に戻らないと…」
「…ああ。付き合わせて悪かったな、風丸!」
苦しそうに笑う守に、私も胸が痛くなる。
「元気だせよ…!」
「風丸も練習頑張って!」
「ああ!じゃあな」
「譲さんも頑張ってくださいね!」
「うん。じゃあね、宮坂!」
爽やかな笑顔を残して走り去っていく2人の背中を、しばらくぼんやりと眺めていた。
* * *
──陸上部部室
今日の部活が終わり部室で着替えていると、心なしかにやにやした宮坂が近づいてきた。
「風丸センパイって譲さんのこと好きなんですね!」
「…は!?な、何言ってるんだ宮坂…!」
いきなり何なんだ…!?
「センパイってけっこう分かりやすいタイプだったんですね!譲さんと話してる時すごく嬉しそうだったし、褒められて照れてましたよね!」
「ち、ちがっ…!そんなことは…」
「顔赤くして言っても説得力ないですよー」
俺ってそんなに顔に出やすいのか…!?
…!?じゃ、じゃあ譲にもばれて…!?最悪だ…。
「センパイ、顔面白いことになってますよー」
クスクス笑う宮坂に少しだけムカついた。誰のせいだと思ってるんだ…っ!
(センパイ、赤くなったり青くなったりして面白いなあ)
「譲さんは気づいてないと思いますよ」
「…!?」
(こ、こいつ俺の考えてることわかるのか…!?)
「それより、伝える方が大変っていうか…。なんか恋愛とか興味なさそうですもんね〜。頑張ってください、風丸センパイ!」
「…」
(み、宮坂って…いったい…)
* * *
宮坂はただの風丸至上主義者\(^q^)/
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