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放課後、看板を持って他の運動部を駆け回る。
──バスケ部
「帝国との試合、出てくれないか!?」
「えー?てか、サッカー部ってまだあったんだ」
「あるっつーの!」
──テニス部
「サッカー、やろうぜ!」
「カッコ悪いよね、君たち」
「あんたらの方が100倍カッコ悪いわ!」
──目金
「サッカー部?この僕が入るわけないだろ?せめて、あと1人というときにもう一度来てくれよ。僕が弱小サッカー部を救った、なんて、カッコいいじゃないか…!」
「ハッ、とんだ勘違い野郎だね。…メガネ叩き割るよ?」
「譲、物騒なこと言うなよ!」
* * *
(好き勝手言いやがって…!)
メンバー集めにこんなにストレスが溜まるなんて…。特に目金とか目金とか目金とか…。もうイライラの最高潮だ。
「あのっ!新聞部ですけど、帝国学園と試合するにあたり、何かコメントを!」
突然赤い眼鏡をしたショートカットの女の子が話しかけてきた。
私達は顔を見合わせ、ニッと一言。
「「部員募集中っ!」」
「え?…えっ!」
困惑している女の子をよそに、私達は次の部活へと向かった。
* * *
「あーあ、メンバー集まんなかったね」
「そうだなぁ…」
そんな会話を交わしながら、ランニングしつつ鉄塔広場に向かう。
階段を上っていくと、豪炎寺の姿があった。すぐに守が声をかける。
「豪炎寺!」
こちらを一瞬見ると、すぐに踵を返す豪炎寺。しかし、守が豪炎寺の前に回り込んだので、それは叶わなかった。
「ここ、すっげーいい所だろ?俺の小さい頃からのお気に入りの場所なんだ!…あのさ、お前も聞いてるだろ?帝国との練習試合」
2人のやり取りを見守っていた私は、帝国という言葉を聞いた瞬間、豪炎寺の表情が険しくなったのを見逃さなかった。
(何か…あったのかな)
「…でも、メンバー足りなくってさ。みんなに声かけてんだけど、誰もやってくんなくて…。なあ、考え直してくれないかな…?」
無言を貫く豪炎寺。守は構わずに続ける。
「何で…、何でやめちゃったんだ?」
…豪炎寺はサッカーやめていたのか。だから守は勧誘にいかなかったんだ。
「あんなすごいキックできんのに、もったいないよ。なあ、何か理由があるなら教えてくれないか?」
「…」
それでも何も言わない豪炎寺。
「…サッカー嫌いになったわけじゃないだろ?」
「…お前、よく喋るな」
やっと喋ったと思ったら、冷たい一言。
「俺達が組んだら、最強のタッグになれるよ!なあ、豪炎寺!」
「…もう俺に話しかけるな」
そう言い残し、柵を飛び越え帰ろうとする。
(あの高さで軽々と着地…。やっぱりすごい奴だ)
「なら、どうしてあの時ボールを蹴った!」
その言葉を聞いた豪炎寺は、ギンッと効果音がつきそうなほど鋭い視線で守を睨んだ。
「しつこいんだよ、お前は」
「…」
「守…」
落ち込んでいる守に、なんて声をかけようか考えていると、守はすぐに気持ちを切り替えたようで「よし!特訓だ!」と言って、タイヤが積み上がっている所へと走りだした。
「…私も、特訓する!」
(一緒に、強く)
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