09
──サッカー部部室
サッカー部員が集まり、冬海を待つ。落ち着かなくてそわそわしていると、ドアが開き冬海が入ってきた。
「よろしい。全員集まっているようですね。え〜、それでは皆さんにお知らせがあります。突然ですが1週間後に久しぶりの練習試合をすることになりました」
なんだ…。廃部の話じゃなかった。秋と顔を見合わせ、安堵する。
「え〜?いったいどこがうちなんかと練習試合をしようっていうんでやんす?」
…確かに。部員が足りないし、弱小ということは周知の事実だ。雷門より弱いとこなんてあったかな。
冬海は勿体ぶって、一つ咳払いをすると、話を切り出した。
「相手は帝国学園です。…どうです、すごいでしょう?」
(…!て、帝国〜!?)
「て、帝国!?それって最強といわれる帝国学園のことでやんすか?」
「この40年ずっと全国大会で優勝している、あの…?」
宍戸が不安そうに言う。
「うちは今7人しか部員がいないんですよ!?帝国となんて試合になりませんって!」
今この時だけは半田と同意見だ。
「部員が足りないのなら、試合までに集めておけばいいでしょう。…もし試合に勝てなければ、サッカー部は廃部になることが決まりましたから」
「ええっ?廃部!?」
宍戸がこれでもか、ってくらい顔を青くさせて言う。こいつ胃とか弱そう。イメージだけど。
「ええ、これは校長と理事長お2人が決定されたことなのです。グラウンドを使えるように頼んでおきましたから、きちんと整備しておいてくださいよ。今のまま帝国の選手を迎えてはとんだ恥さらしですからね。それでは、話は以上ですので」
冬海は嫌味ったらしく要件を告げると、部室を出ていった。
…随分簡単に言ってくれるね…。あの最強と呼ばれる帝国相手に、今から部員を集めるなんてもう廃部が決まっているようなものだ。
「ど、ど、どうするでやんす?これは面倒なことになってきたでやんすよ〜!」
「ついに廃部か。いつかこうなるとは思ってたけど…」
「宍戸!何言ってるんだ!廃部になんかさせやしない!せっかくグラウンドが使えるんだ。メンバーを集めて練習して、帝国をあっといわせてやろうぜ!」
…守ならこう言うと思った。自然と頬が緩む。
しかし、それはすぐにひきつることになる。
「…まったく、おめでたい奴だな。今さら部員なんて集まるわけないだろ」
冷たく染岡が言い放つ。
「そうでやんすよ。キャプテン、まだわからないんでやんすか?」
「そんな…。久しぶりの試合なんだぞ?みんな嬉しくないのかよ?」
守がみんなの顔色を伺うが、メンバーはもっとやる気をなくしてしまったようだ。
「恥かくのがわかってるのに、嬉しいわけがないだろう」
はあ、とため息をつく染岡。
「おい!何も始まってないうちから諦めるなよ!試合に勝つか負けるかなんて、やってみなきゃわからないだろ!足りない部員は4人だ!俺は絶対に部員を集めて帝国と試合してみせるぞ!」
何も反応を示さないみんなを見て、ぐっと何かを堪えるような顔をした守は、部室を出ていってしまった。
私は部員を一瞥すると、すぐに跡を追う。
「守っ!私も部員集め手伝う!」
「ほんとか!ありがとな譲!」
「よし、今日の放課後から頑張ろう!」
「おう!」
(帝国相手でも諦めない守を、出来る限り手伝いたいと思うんだ)
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