ここにいる君へ 接近遭遇 side:悠斗 ずっと一人だった。 必要最低限の会話。 後は目を合わせることもない。 居るか居ないかもわからない。 居ても居なくても誰も困らない。 それが僕。 自分の居場所のようでそうでない教室が、僕の定位置で。 浮く事もなく。 馴染む事もなく。 誰かに声を掛けられても、最低限の返事だけをして。 そうやってずっと、誰とも関わらずに生きてきた。 孤独には慣れているつもりだたった。 「おっ友達になりましょう?川野悠斗クン」 だからその言葉に、こんなに心が揺れるなんて思ってもみなかった。 自分で捨てた癖に。 自分でこの場所を選んだ癖に。 こんなにも…… 手を伸ばしたくなる。 誰かの温もりを求めたくなる。 優しく掛けられた声が、笑顔が、痛いくらい嬉しかった。 「……ぼ…僕は」 昔から憧れだった。 誰かと笑い合う風景。 誰かが自分の隣に居るという事。 「…あーあ」 喉から手が出る程欲しかった。 憎いくらい羨ましかった。 胸が焼け付きそうな程、ソノ光景が恋しかった。 ―――ごめん。 だけど出てきた台詞は、心の中とはまるで正反対の形をしていて。 「僕には、そんな幸せ…望む資格ないんだよ」 自分の意志で逃げてきた筈の僕の手は、情けなくも震えていた。 「一人で、平気…」 カチャリと鍵を開けたドアの向こうには、真っ暗な孤独。 明日も明後日もその次も、僕はそうやって生きるんだ。 ---------- “平気”なんて、嘘。 [*←][→#] [戻る] |