ここにいる君へ
プロローグ
―――新堂先輩が学校を辞めた。
その事自体に不思議はない。
かなり無茶苦茶な性格と奇抜なスタイルで、型にハマらない生き方をしている人だったから。
学校というシステム自体が合っていなかったのだろう。
カッコイイ人だった。
女の人だけど。
うん。惜しい人をなくした。
でも今はそんな事どうでもいいのだ。
私がその情報を耳に入れたとき、真っ先に思ったのは部活の事。
唯一3年の新堂先輩を差し置いて、何故か2年の私が部長を任されている“超常現象研究部”。
その怪しげなネーミングからも想像がつく通り現在部員数がギリギリなので、新堂先輩がいなくなってしまうと最悪廃部に陥ってしまうのだ。
「ヤバイよねー。どーする?姫」
ゆるい口調で声をかけてきたのは副部長の亮。
名前だけ書いてくれる友人や、暇を持て余している帰宅部の知り合いもいるのだけれど……
「うーん。代々部員は指名制だからねぇ」
一つ、新規部員は部長が推薦した人間であること。
二つ、部員全員が納得して受け入れられる人選で有ること。
これは超常現象研究部が誇る鉄の掟なのだ。
私は部長の責任としてそれなりの人間を得らばなければならない。
前部長の夕陽先輩はこう言った。
『いいかい雛子君?もしも君が新しい部員を選ぶ時が来たらね、自分の周りをよく見るんだ。視野を広げて、全校生徒全員を見るつもりで。その中で最も君を必要としていて、何より君が必要だと思える人間を選ぶんだよ。それが最良の選択方だ』
私を必要としていて、私が必要とする人。
「…やっぱりあの人かなぁ」
本当はずっと気になっていた、あの人。
声をかけた事すらないけど…
私の欲しいものをくれるかもしれない人。
あの人が私を必要としているかどうかは、正直な所わからないけど。
独りよがりで勝手な想像だとしても、その人は“誰か”を必要としているように思えた。
だから、貴方を選んだんだよ。
ーーーーーーーーーー
後悔なんかしていない。
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