[携帯モード] [URL送信]

ここにいる君へ
プロローグ




―――新堂先輩が学校を辞めた。


その事自体に不思議はない。
かなり無茶苦茶な性格と奇抜なスタイルで、型にハマらない生き方をしている人だったから。
学校というシステム自体が合っていなかったのだろう。
カッコイイ人だった。
女の人だけど。
うん。惜しい人をなくした。

でも今はそんな事どうでもいいのだ。
私がその情報を耳に入れたとき、真っ先に思ったのは部活の事。
唯一3年の新堂先輩を差し置いて、何故か2年の私が部長を任されている“超常現象研究部”。
その怪しげなネーミングからも想像がつく通り現在部員数がギリギリなので、新堂先輩がいなくなってしまうと最悪廃部に陥ってしまうのだ。

「ヤバイよねー。どーする?姫」

ゆるい口調で声をかけてきたのは副部長の亮。

名前だけ書いてくれる友人や、暇を持て余している帰宅部の知り合いもいるのだけれど……

「うーん。代々部員は指名制だからねぇ」

一つ、新規部員は部長が推薦した人間であること。
二つ、部員全員が納得して受け入れられる人選で有ること。

これは超常現象研究部が誇る鉄の掟なのだ。

私は部長の責任としてそれなりの人間を得らばなければならない。

前部長の夕陽先輩はこう言った。

『いいかい雛子君?もしも君が新しい部員を選ぶ時が来たらね、自分の周りをよく見るんだ。視野を広げて、全校生徒全員を見るつもりで。その中で最も君を必要としていて、何より君が必要だと思える人間を選ぶんだよ。それが最良の選択方だ』

私を必要としていて、私が必要とする人。

「…やっぱりあの人かなぁ」

本当はずっと気になっていた、あの人。
声をかけた事すらないけど…
私の欲しいものをくれるかもしれない人。

あの人が私を必要としているかどうかは、正直な所わからないけど。
独りよがりで勝手な想像だとしても、その人は“誰か”を必要としているように思えた。

だから、貴方を選んだんだよ。

ーーーーーーーーーー

後悔なんかしていない。


[*←][→#]

2/5ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!