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私的青春謳歌法
現実逃避


と、まあこんなに偉そうに語ってはいるが、結局はただの現実逃避にすぎない。

あぁ、そうだ。
申し遅れたが、私は東雲翡翠という、立海大付属中学校に通うごくごく一般生徒である。
一応この物語の中ではヒロインというものになる。
いや、語り手といったほうが正しいか。

十中八九平凡と言われる私ではあるが、特筆することが一つだけあるのである。

男子テニス部マネージャー

これである。
一見すると普通の肩書きにしかみえないであろう。しかし、私は"立海大付属中学校"の男子テニス部マネージャーなのである。

それではその中学校のどこに特筆すべき点があるのか。


それは実績にある。

我が校は文武両道を掲げ数多くの部活が輝かしい成績を残している。
その中でも抜きん出ているのが「男子テニス部」なのだ。


他の部よりもさらに成績を残し、『常勝』を掟とする部である。
これまでの数々の功績から我が部はこう謳われる。

【王者 立海】

どんな試合でさえも手を抜かず、負けはしない姿はまさに王者でそのものである。


如何であろうか?
例えマネージャーであろうとも、とても素敵な肩書きであり、誇りでもあると私は思う


さて、読者の方々に素晴らしさが伝わったであろうところで、私が現実逃避していた理由をおさらいしてみよう。

私は放課後の掃除当番のため、教室の清掃をし、そこで出たゴミを捨てに来たのである。

余談ではあるが、じゃんけんでゴミ出しする人を決めたのだが見事に私の一発負けであった。解せぬ。

靴を履き替え外に出て、ゴミの収集所である裏庭に向かっていた。
後は目の前の角を右に曲がればもうすぐ目的地という所で話し声が聞こえたのである。

もし、告白であったら野暮なことはできない。空気を読まないでゴミ捨てを優先するほど図太い精神ではないと自負している。

しかし、人の好奇心というものは憎く、ちょっと覗くくらいなら許されるだろうと思い覗いてしまったのであった。

覗いた光景は私の想像とはかけ離れたものだった。

数人の女子生徒が一人の女子生徒を囲っている。

これだけで察しのいい人は何が起こっているか理解できるであろう。

そして、その標的となっている女子生徒は、男子テニス部マネージャーの神崎 姫であった。

…え?もう一人マネージャーがいるとか聞いてない?
……あぁ、申し訳ない。
言い忘れていたが我が部の部員数は50人余り。とてもじゃないが、私一人では面倒が見切れない。もし見れたとしても私のHPなど速攻0になりゲームオーバーである。

そういう結論に至りもう一人マネージャーを増やすこととなったが先ほども申し上げたように我が校は文武両道を掲げている。
そのためによほどの理由がない限りは皆部活に入ることを定められている。

新しいマネージャーは無理か…

そう諦めかけてたときに彼女が転入してきたのである。
もちろん部活に入ってない彼女に白羽の矢が立った。
そして必死の説得の末めでたく去年の10月頃からレギュラー、準レギュラー担当としてのマネージャーになったのであった。

彼女がレギュラー、準レギュラーのマネージャーを志願してきたため、私は平部員のマネージャーをしている。

神崎さんはとても可愛らしい、人形みたいな容姿をしている。そこは問題ない。
可愛らしい見た目なのだ。おとなしくしていればいいものの、中身はただのミーハー。
レギュラー、準レギュラーを志願したのも彼らの見た目故だろう。

マネージャーを増やしたことで少しでも私の負担が軽減すると思っていたが、望んだ結果は得られなかった。

タオルは洗濯はせずに私が干したものを、ドリンクもつくらずに私が平部員用に作ったものを勝手に持って行き、飲み終わり回収されたボトルは洗わずに放置。そして、ひたすら応援。休憩中は過度なスキンシップで選手に接する。

これではフェンスの周りにいるテニス部ファンよりもたちが悪い。

これでは私の負担は以前とほとんど変わらないのであった。



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あきゅろす。
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