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永遠のフルーフ
第一話「日常」
 いつもの朝、テーブルの向かいにはコーヒーを飲みながら新聞を読む父親。
 パンを頬ばりながらテレビを見つめる私。
 テレビの画面ではニュースキャスターが殺人事件のニュースを淡々と読み上げていた。

 物騒だなと思いながら、制服に着替える。準備を完了し、玄関を開けると友人の顔。
 おっはよーっ!と、とびきりの笑顔と大きな声に、眠気を一気に吹き飛ばされる。
 笑顔を返し、急いで玄関を出た。
いつもの通学路を歩く。
 「それでね、あのとき見つけた猫のね、顔がもーのすごく可愛くてね!それで……」
 「うん、あーそうなんだ。」
 隣で一人で喋っている友人に素っ気ない返事を返し、物思いに耽る。
 友人は気付かすに喋り続けていた。
 私が、静かに考え事をしていると、しばらくして、彼女が構って欲しさに肘でつついてくる。
 しょうがないなと、ちらりと横を見ると、彼女はへらっと笑うのだった。

 これがいつもの日常。いわゆる『当たり前』というものである。
 世界に、どれだけ大きな事件が起こったとしても、所詮は他人事。
 きっと自分良ければ全て良し、と言うやつだろう。
 もし、何らかの危機的状況に陥ったとき、自分を捨てて相手のことを考える、なんてことができる人間は、地球上の人間の2割にも満たない筈だ。

 人間なんて皆同じもの。それは、勿論私も例外ではないのだけれど。
 今日のニュースを思い出しながら、そんなことを考えていた。


 いつものように授業を受け、友人と笑い、何不自由なく暮らしている。
私も、それなりに幸せな日常を送っているのだ。

 放課後、生徒の笑い声がたたない、心地よい騒がしさ包まれたに校門を足早に出る。友人は部活動をしており、帰宅時、私はいつも一人だった。流石に女子高校生とはいえ、一人で校門でたっていては目立つだろう。

 うつ向きがちに歩き、考え事をしながら家路を急いでいると、前から歩いて来た人にぶつかってしまった。

 私が早足だったせいか、ぶつかった拍子に鞄のチャックが開き、中のものが散らばってしまっていた。
 すぐさま顔をあげて謝る。いくら私が転んだとはいえ、ぶつかったのは私の不注意からだったのだから。

 「す、すいませ……」
顔をあげると、そこには端正な顔立ちの男性が立っていた。まさに美人。
 驚いたせいか、彼の薄く開いた唇はとても艶やかだった。
 言おうとしていた謝罪の言葉も消える位に。それは、もう綺麗だった。

 はっと我に返り、辺りに散乱した教科書類を慌てて片付け、改めて謝る。
 「す、すみませんでした。」
 顔をあげると、その男性はふっと笑って、気をつけなよ、と言い喧騒の中に消えて行った。
 行っちゃった……と少し残念な気持ちもあるままに、ふと地面を見ると、彼の物であろうハンカチが落ちていた。

 拾ってみると、ストライプ柄の物で、少し地味な感じもするけれど、高級感漂うそれは、まさに彼にぴったりだ。
 持ち物までイケメンなのか……と一人、感心する。ああ、そんなことをしている場合ではなかった。

 改めて、彼の行った方向を見るけれど、当然いるわけがなくて、戻ってくる気配もない。追いかけようとも思ったが、今から追いかけても体力の無駄だろう。
 はぁ……と溜め息を着きながら、交番に行くしかないか、とトボトボと歩き出す。交番は、ここから少し遠いが、しょうがないだろう。

 交番に着くと、明らかに暇であろう中年男性が座っており、ハンカチを渡すと、同時に電話番号の記入もお願いされてしまい、面倒臭いばかりだった。

 帰宅し、家でふと、あの人の事を思い出す。かっこよかったなぁと思い、また会える事を密かに願った。


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