いつかの僕等
後悔
ハイヒールが床を打つ音が聞こえる。
母親が仕事に行くようだ。ドアの開く音がして、それに続き、「行ってくるね」と声が聞こえた。
(どうしようかな。学校また休もうかな。)
布団に潜ったまま、再び携帯を手に取る。その時、思いついた。
「進自!」
進自とは、俺のいとこで、9歳年上で頼りがいが在る。
きっと彼に相談すれば、親身になって、真剣に答えてくれるはずだ。
早速、電話を掛ける。
『もしもし』
眠そうな声が電話から流れてくる。安眠を邪魔してしまったかも知れない。
「もしもし、あの、久しぶり。瑞希だけど」
『瑞希!?』
驚いた声を出した進自。
それもそのはず。進自にはもう半年も電話もメールもしていない。
『なんで今更……。心配したんだぞ』
「ごめんって。あ、そう言えば相談があるんだけど」
『相談〜!? 今か!? お前つくづく自分勝手な奴だな』
「あはは……。ごめんって」
軽く謝り、話を続ける。
「実は、司と喧嘩しちゃってさあ………。学校に行きたくないんだよね」
進自の事だ。告白されたなんて言ったら、また騒ぎ出すだろう。
『喧嘩くらいで学校行きたくないって……。お前本当に高校生か?』
「分かってるよ。でも気まずくなっちゃってて……。」
『そうか…………。でもな、瑞希。お前が学校行ったら変わることだってあるだろ。お前が一歩踏み出さない限り、状況は変わんねーぞ。』
「一歩踏み出す……」
『そうだ。俺から言えることはこのくらいだな。まあせいぜい頑張れよ。』
「え、あ、う、うん。ありがとう。」
電話を切る。
一歩踏み出す……か。
取りあえず今日は学校に行こう。
出来るだけ司と喋らないようにすればいいと思うし………。
浮かない顔で溜息をついた。
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