いつかの僕等
恋心
「はぁはぁ……。」
信じられなかった。信じることなどできなかった。
『俺、瑞希の事、友達として見れない。ごめん瑞希……俺、おまえのこと……好きだ。』
『好きだ』彼は確かにそう言った。 もちろん友達としてでは無く、恋愛対象として。
「逃げ……ちゃった。」
どこかの家のコンクリートの塀に寄りかかる。
駄目だ。状況を理解出来ていない。 男から突然の告白。しかも信頼していた幼なじみから。
ショックを受けたのは言うまでもない。
告白されたときは何が起こっているのか分からなかったから、思わず逃げてしまったけど。
「司、今、どんな顔してるのかな。」
告白した相手に何も言われず立ち去られるとか。嫌だっただろうな。
しゃがみ込んで俯いた。明日どうやって会えばいい?
もう自分の中で司=親友という考えは消えた。というか自然に接する事が難しい。
普通におはよう、かな。
いや、でも、もう俺のこと嫌いになってるかも。だったら無かったことにして、明るめにおはよう! とか。
色々な考えが、頭の中を交錯し、益々どうすればいいか分からなくなる。
……無視、とか……?
いやいやいや、おかしいだろ。今まで毎日欠かさず挨拶してしきたのに。
今更気まずくなるのは……。
……ん?でも考えてみると、それが一番だろ。
傷ついてたら、変な慰め方って嫌だと思うし……。
「無視するしかないのかな……。」
そう自分に言い聞かせて、家路を急いだ。
翌日、いつも朝、鳴る筈の家のチャイムが鳴らなかった。
高校になって初めて一人で登校した。
思えばいつも隣に司が居たのだ。
司がいないことが告白を真実だと強調しているようで。恥ずかしくて走っていった。
気づけば学校に着いていて、昨日のことを思い出すと、急に帰りたくなった。
踵をかえそうとした時、目の前に司が居た。
「……あ」
「瑞希……あのさ」
司が俺の肩に手を置こうとした。
「や、やめて!!」
……ビックリして思わず叫んじゃった……。
司は、俺の肩に置こうとしていた右手をゆっくり下ろした。
「ごめん……」
その言葉を聞かずに俺は走り出した。
どうしたらいいか分からなかった。
校舎に向かってただただ走っていく。
司の顔を見るなんてこと、出来なかった。
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