読み物
寂しがりやの猫(臨帝)
今日は土曜日で朝から雨が降っていた。夕方になっても止まなかったがお腹がすいたので夕飯の買い出しに行った。
スーパーで買い物をし終えてもまだ雨は止まない。外はすっかり暗くなっていた。少し重たい荷物を持ちながら家に帰る。
しんしんと降る雨の中で通りすがる人はまばらだ。
ふと足を止めた。誰もいない路地を少し奥に進んだ。意味はない。ただなんとなく気になった。何がというわけではなく、本当になんとなく。
ちょっと奥に入ったところで黒い塊をみつけた。
膝を曲げてコートのフードを被りじっとうずくまって動かない。
近くによってしゃがみ込む。
持っていた傘をそちらに傾ける。
「風邪引きますよ」
そう話かけると、黒いコートから手が伸びてきてぐっと引き寄せられた。
強く強くまるで逃がさないとでもいうように抱きしめられる。
されるがままだったが、些か寒い。
「一緒に夕飯食べましょう」
黒い塊はこくんと首を縦に動かした。
立ち上がり、黒いコートから伸びる白い手を掴んだ。
黒い子猫は居場所をみつけた。
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