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鯣イカの戯言
6

まだ時間が早いせいか客はまばら

平日だし、連日の奉仕で今日はそれほどヤリたい気分じゃない


暇になったから遊びに来た

それだけだった


時折声をかけられたが、それほど好みでもないから断る

俺が断る度に、カウンターの奥から店長が熱い視線を寄越した



「・・そういえばミケ・・来ます?」
すっかり忘れていた存在

この店で拾われたんだよな

「ミケ・・?あぁミケちゃんね、う〜ん、来ないわね」

店長は少し声のトーンを落とす

「・・?俺、前に潰れた時にアイツによくしてもらって
チョット阿呆だけどいい奴でしたよ」

「そう?ミケちゃんに食べられちゃったんじゃないの?
ウフフ・・」


目を合わそうとしない店長を見つめる


俺の必殺技
『無言色っぽい』
サエコさんが付けた


隠してる事を話出すまで何時間でもこうして待っていると、意外に人は簡単に落ちる


優しい視線で、決して責めるわけでなく

沈黙が恐くなって、落ち着きが無くなれば直ぐだ


「・・ミケちゃん・・目茶苦茶やるから」

降参したとばかりに店長は溜息交じりに口を開いた









ブー
色気のないインターフォンの音の後に
「はーい」
と、間延びした声


針ガネを使えば開いてしまいそうなドアの鍵が回り、小さな顔が覗く

「・・あっ!ケンジ!?」
「よぅ、久しぶり」

ミケは慌てて扉を開ける

「久しぶり〜、元気?」

「あぁ、アイス買って来たけど食べる?」

「うん!」

招かれた部屋の中は三ヶ月前と変わらなかった

玄関横の台所には、夕食の準備なのか野菜が転がっている

「ハーゲンダッツだぁ
お高いアイスだぁ」

渡した袋を覗き込み嬉しそうに声を上げる


コンビニで買ったアイスをこんなに喜ぶなんて

なんて安い奴なんだ


「チョコチップは俺のな
バニラとストロベリーはミケの」

「え〜!?いいの?ありがと〜
・・そうだ、そうだ」

ミケは引き出しの奥から真新しいアイススプーンを取り出す

お湯を張ったカップにスプーンを浸けて温める

「CMでやってるの、一回やってみたかったんだ〜」

溶けかけたアイスに必要無いと思ったが、ミケは満足そうだった


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あきゅろす。
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