鯣イカの戯言 4 「ライブチャットとかやるの?」 俺はこのテに詳しくない ミケはこんなだけど、意外にパソコン関係は出来る奴なのかもしれない 「ライブ・・?いや、これは俺の恋人と繋がってるの」 そう言うとミケは慣れた手つきでパソコンを起動させる 「俺の彼氏、超タボーであんまり会えないのね だからコレを使って話したり、見せたり、指示してもらってんの」 「・・・」 なんか独特のワードが出てきたけど、ミケだからか? 「・・それ、楽しい?」 「超楽しいよっ!例えばオナ○ーしてみて とか言われれば、此処でこうして・・」 引き出しから立派な大人の玩具を取り出して実演してみせようとする ダメだ 付いていけない 「見て貰ってると興奮するし、本当のエッチが出来てるみたいで嬉しいんだ」 「・・本当のエッチは出来ないの?」 「ん〜・・半年くらい会ってないんだ でもコレを使って俺を見て、興奮してくれるから 俺、箕輪さんが大好きなんだ」 幸せそうで良かったね 好きな人とどんな形であれエッチ出来るのなら最高の慶びですよ お幸せに ・・・って言うと思ってんのか この馬鹿が そんなんじゃ満たされないから他の男漁ってんだろうが 頭のネジと同じくケツもユルユルなんだろ 「・・いいのか?俺なんか泊まらせて 彼氏が心配するんじゃない?」 「大丈夫だよ〜 俺浮気しないし ・・今日は連絡ない日だからもうオシマイ」 メールをチェックすると手慣れた動作で電源を切る 俺にはミケの言ってる事が理解できないが、取り敢えず体で支払わなくて済みそうだ 結局、俺は何だかんだ言いながらその日もミケの家に泊まった 勿論体のお支払いもなく テレビを見て、ミケが作る料理を食べて、頭が痛くなりながらもミケと色々な話しをした 話のまとまりや文脈がバラバラなミケの話に、最初は適当に相槌を打っていたが、要領を得ない話に疑問や確認を入れる事が多くなる 話は一向に進まないが、ミケは気にするどころか、逆に俺の無躾な質問を一生懸命考えて答えていた 馬鹿だけど真面目なんだな・・ 好感は覚えるけど、話の内容には興味は惹かれない 女でも男でも器用で要領が良い奴がもてる 自分自身もそうだし、相手にもソレを求める 価値観が似た相手とスマートな恋愛をするほうが満足できる ミケは恋人の話をする時、少し焦って早口になる 赤面した顔を見ればすごく好きな事が伺える どんな奴だか知らないが、ミケを相手にするなんて出来た奴だと信じたい いや、きっといい奴に決まっている 「俺ね、何時も笑ってて幸せだねって言われるのが一番嬉しい」 ミケはお決まりのように笑顔を見せた 「こんなに沢山話しをしたのは初めて ケンジさえ良かったら友達になってね」 布団に潜り込みながらミケが呟いた一言 「いいょ」 適当に返した返事 人柄的には悪くないし、細かい事も言わない 面倒臭さくないミケはよく出来た友達、もしくは家族のようで ひどく居心地の良さを感じた きっと恋人も同じ感覚なのか 『面倒臭さくない』っていうのは、最高の褒め言葉で、最低の評価だ 翌日、ミケの家を後にする 玄関まで見送りに来たミケは、少し寂しそうな顔をした 「また来てね?」 「あぁ、今度美味しいアイス買ってくるよ」 「本当?待ってるね」 心底嬉しそうな顔をかわいいと思いながらも、結局それから三ヶ月以上も放ったらかした訳だが・・ [*前へ][次へ#] [戻る] |