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白と青と黄色のもろもろ
交差10
時々雪村は学校を休む



連絡をすれば返信は直ぐにきた


『なんか、ダルい』

サボりか・・


腹が痛くても熱があっても勝手には休めない俺からしてみれば羨ましい限りだ



何回かお邪魔した雪村の家を訪ねれば決まって嬉しそうに迎えてくれる

「お前またサボりかよ」

「朝は本当に辛かったんだ
半日寝たら良くなったけど」

差し入れた微炭酸の飲み物を開けて喉を潤す



「・・単位とか計算してんの?」

単位が引っかかるほど休んではいないが、警戒心の強い俺からすると、何も考えてないように見える


「・・平気だろ?」

ほらな

やっぱり何も考えてない


今までもそんな心配は一切しなくてよかったんだろう


溜息を付きながらベッドに寝転ぶ

先程まで雪村が寝ていたためか温かさを感じる




机に向かった雪村は学校から預かった提出物を眺める


頭の後ろで腕を組んだままその横顔を眺める


前髪が邪魔なのか、丁髷のように結んだ変な格好をしているが、額から鼻筋にかけてのラインが凄く綺麗だった



・・・なんだかな・・



同じ男として、僅かに嫉妬を繰り返している


歪んだ感情がじわじわと増殖して追い詰められる


「・・雪村って女とか・・どうなの?」


顔を上げて少し驚いた表情をする

「・・女?って・・好きなコとか?
・・馬場はどうなの?」


「・・俺が聞いてんのに・・
俺は中学の時はそれらしいのは居たけど・・」

「あ、そうなんだ・・
・・どんなコ?」

「普通の、なんか何処にでもいる感じの
大して好じゃなかったから、卒業と同時に別れた」

「・・ヘェ・・」


雪村は少し表情を曇らせて俺から目を離した


「・・で?
お前は?付き合ったり・・何処まで経験あんの?」


「・・付き合ったりとかは・・ない

子供の頃、好きなコはいたんだけど・・

・・俺その辺の感覚未熟」



感覚未熟?面白い言葉にプッとふいた

「笑うなよ」

「あ、違っ・・」
以外だった

コイツならより取り見取りなんだろうに


「・・じゃあ、童貞?」


ニシシ・・業とらしく笑顔を向ける
だよな

自分が経験している事をしらない同い年の友人に初めて優越感を覚える



困った顔をさせたくてついつい調子をこいた


案の定、雪村は困った顔をして俯いた


「・・馬場はその・・何処まで経験あんの?


「・・雪村のエッチ!・・」

「・・テメッ!?」

一瞬睨んだ雪村は真っ赤な顔をして直ぐに俯く


・・本当、なんなんだろ?この異様なまでの興奮は


「・・なぁ、明日出かけね?女紹介してやるよ」

「・・え?」

驚いて目を見開く


「お前見かけはイイけど、なんか抜けてっからな」


正直親切心なのか、ただ汚してみたかったのか
俺にも判らない



「・・馬場、俺・・」

「大丈夫だって
別に金とったり、付き合ったりとか面倒臭い事ないから

ただ・・

まぁ、好みは聞けないけどヤルだけなら問題ないから」



地元のたまり場となっているクラブで明日イベントが組まれていた

シカトを決め込んでいたが丁度イイ


馬鹿とガキしか集まらないがお遊びには手も金もかからない


「夕方迎えにくるから」

雪村は困った顔をしたまま暫く黙っていた






翌日、昼過ぎに制服に着替えて寮を出る

新垣には学校の補習に行く、帰りは遅くなる
と伝える


「休みの日なのに大変だね」
新垣は眼鏡の奥にある瞳を無理に和ませる


気付かれてんな


「・・ガキじゃないんだ、無理はしない」

「そう?宜しくね」

生暖かい見送りを受ける


大体において俺は信用されてないんだと改めて感じる
まあ、無理もないよな





駅ビルのトイレで着替えて荷物はコインロッカーへ



そのまま雪村の家に向かうと休みの日だけあってインターホンには父親が出た

「はい」

「こんにちは、雪村君いますか?」



玄関のドアを開けた親父さん
この時初めて見た

凄い・・なんつーか、デキる男
って雰囲気の人で、正直あの雪村の?って感じだ

次に似てねぇな・・と思った


「ちょっと待ってね」


にこやかな笑顔を貰い変に緊張する

ドアを開けたまま親父さんは廊下から見える階段の上を見上げて声をかける


「ジョーイ、友達来てるぞ」


ジョーイ?
プッ・・なんだよ変な呼び方


「んー!今行く!」


ガタガタバタバタと音がして階段から雪村が顔を出す

「悪い、ちょっと待って」
部屋を駆け回っている音が聞こえる

その間、親父さんは雪村を目で追って横から「忘れ物はないか」と口出しをする


やっと雪村が玄関に現れて靴を掃き出す

「じゃ、父さん今日は帰り遅いから

夜ご飯は準備しておくから

お前もあんまり遅くなるなよ?」


「判ってるよ」

父親の方は見ないで立ち上がる


今にも出ていきそうな雪村の背中に親父さんはまだ声をかける

「・・ジョーイ!」

雪村は出だしの一歩を制止されて渋々振り返ると、それに合わせるかのように親父さんは鍵をチラツカせた

「あ・・」

「帰って来て家に入れないだろ」

渋々親父さんに近付き鍵を受取る



親父さんは鍵を渡すと両手を拡げて雪村をギュッと抱きしめてデコチューをした



驚き目を見張る俺


は?




「・・ヤメてよ」

雪村は親父さんの両手を振りほどく

後ろから見ても耳が真っ赤だった


「なんで?何時もしてるだろ
ジョイもキスして」


ん?と笑顔で頬を雪村に近付ける

「・・友達の前とか嫌だって言ってんだろ」


親父さんは俺を見て笑った

「いってらっしゃいの挨拶だ
そのくらい判るよな?」

親父さんの笑顔には余裕が感じられて、独特の目力にドキンとした


こうゆうの大人の色気っていうんだろうな・・



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あきゅろす。
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