短編 2011 ハロウィン小説 【図書委員長とおれ】 「「「トリック オア トリート」」」 「…ん……何、してんのー?」 「お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ」 「みたいな?」 「ん、菓子」 「や、訳さなくても分かるしー。まず、お菓子とかないよー」 というか皆声揃えて、順番に言っちゃって息ピッタリね。 目を開けると、目の前にはお馴染みの面々がいた。潤ちゃんに、鈴木に中村だ。 てか、中村はただのお菓子食べたいだけでしょ。甘党だもんなー。 いやいや、そんなことより…何それ。俺の視線は、自然と3人の頭に行った。 「………何で、動物の耳なんかつけてんのー?」 潤ちゃんは金色のライオン耳、中村は薄茶色の垂れた犬耳。そんで、鈴木は灰色の狼耳…かな? 皆、それぞれ違う動物の耳をなぜか頭につけていた。また似合うのが、なんとも言えない。 「さっき、数人の女子に囲まれて一斉にハロウィンのお決まり文句を言われてさ。菓子持ってないって言ったら、『じゃ、これつけてね。放課後だけど、1時間以上つけたままで残ってね。外したら……。じゃ、よろしくね!』って笑顔で言われてさ……反論する隙もなかったぜ」 中村が女の子の声真似つきで、揃いも揃って動物耳をつける経緯を教えてくれた。その説明に、潤ちゃんも鈴木も苦笑しながら頷いている。 女子に囲まれてそんなこと言われるって何それ怖い! 俺、寝てて良かった!! 心の底からそこに居なかったことを安堵しつつ、3人の肩をそれぞれポンポンと叩いてお疲れー、と言っておく。 「あ、お前自分に関係ねぇ、とか思ってるだろ?」 「え? 関係なくない?」 「お前、菓子持ってねぇんだろ?」 「うん」 中村の質問の意図が分からなくて、首を傾げる。そんな俺に、目の前の3人は楽しそうな笑みを一斉に浮かべた。……怖いんだけど。 思わず椅子に座ったまま後退りしようとしたところを簡単に潤ちゃんに捕まってしまった。 「じゅ、潤ちゃん…?」 「ん、鈴木。やれ」 「あーいよ」 潤ちゃんは俺の呼び掛けに全く答えずに、鈴木に何かを命令した。潤ちゃんの言葉に素直に従って、近付いてくる鈴木。 え、何これ何これ怖いんだけどっ 思わず、ギュッと目を瞑った。その直ぐ後に頭に何か違和感を感じて、潤ちゃんの手が外される。恐る恐る目を開けると、ニヤリと笑う潤ちゃんと満足気な中村の顔、そして笑顔の鈴木。 「これでお前も仲間だな」 うん…? 仲間…? え゛…仲間ってまさかっ! 慌てて、頭の上に手をのばす。するとそこには、ふにっとした柔らかい感触。 「やー、西花君ったら猫耳が良くお似合いで。さっすがー」 ちなみに黒猫だよー、と楽しそうに言う鈴木の顔が恨めしい。 「なんで、こんなもん潤ちゃん達が持ってんのー………」 「どうせなら優にもやるから、獣耳もう一つ持ってないかって言ったら快く貸してくれたぞ」 「そーですか……」 猫耳を付けたままで、俺は机に沈んだ。 なんかもう脱力って感じだー。 てか、何で女子こんなもんいくつも持ってんの? [*前へ][次へ#] [戻る] |