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図書委員長とおれ
13

「ホントにすまなかった」


図書館の中に入って、すぐに腕を引かれたまま奥の部屋に連れて行かれた。そして、今は水で濡らしたタオルでおでこを冷やしてる最中だ。

俺と向かい合わせに座っている委員長から何度目かの謝罪をされて、逆に申し訳ない気持ちになる。


「大丈夫ですってー。かわいー女の子ならまだしも、俺男ですし! しかも、赤くなってるだけなんで」


顔からタオルを離して、明るくそう言うと、委員長が俺の顔をジッと見つめてきた。何これ超恥ずかしいんですけど…思わず顔を逸らす。

横目で委員長の顔を確認してみると、さっきよりも眉間の皺が減っていて安心する。


「大分、赤みが引いたな…」
「だから、大丈夫なんですってー」


嘘はついてない。実際もう痛みはないし、切れてもいないんだから。…それにしても、こんなに心配されるとは思ってなかった。

この短時間で心配そうな顔をする委員長に見慣れてしまったのか、これくらいでこんな顔をする委員長が急におかしくなって俺は思わず吹き出してしまっていた。


「……西花」


俺が吹き出したのに、委員長が今度は別の意味で眉間に皺を寄せて低く俺の名前を呼ぶ。その姿が拗ねたように見えて、そんな委員長の姿が俺の笑いを更に誘った。


「だっ…て、いいんちょー…あっはは…しんぱ、しすぎっ」


暫く笑っていたけど、さすがにこれ以上笑うと鉄拳もらっちゃうなって思って、無理矢理笑いを収める。

笑い過ぎて出てきた涙を右手で拭いながら、委員長を伺ってみる。すると、そこにはなぜか驚いた顔をした委員長がいた。え、何で?


「…お前、そうやって笑えるんだな」


言葉の意味が分からなくて、首を傾げる。


「いっつもへらへらした顔をしてるが…今みたいに爆笑してる顔は初めてみた」


いつもへらへらって…いや、確かにそうだけど。
拗ねて少し唇を突き出してみるけど、そんな俺の顔がおかしいのか今度は委員長が吹き出した。


「おっまえ…子供みてぇ」


そう言って、委員長はクククと喉の奥で笑った。さっきと逆転してる…。これが更に子供っぽいのは分かってるけど、なんとなくムッとしてそっぽを向いた。


「ああ…でも俺はさっきみてぇに笑ってるお前、結構好きだけどな」

その言葉に思わずバッと振り返ると、委員長が目を細めて穏やかに笑っていた。きっと何の他意もない言葉。それなのに、俺の体温は勝手に急上昇してしまうんだ。

委員長は、そのまま椅子から立ち上がって伸びをしたから、俺の表情には気付かれなくて済んだ。嬉しくて、嬉しくて、堪らないそんな顔してる俺の顔を。



それから、委員長と二人で人が来ない図書館で本の整理整頓をしたり、掃除をしたりしてこの日は終わった。










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あきゅろす。
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