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心の行方
 


先輩の中には微塵も俺の存在はないのだと改めて思い知らされて、強ばっていたはずの体からは力が抜けてしまった。先輩の手に重ねていた俺の手も、重力に従いだらりと落ちる。



「…そりゃ、先輩は制裁の理由がなんであれ、関係ないかもしれないけど…」

「違う」


美少年ハーレム(命名は俺)の皆さんと本当に同じ人類なのかと疑いたくなるほどに、なんの特徴もない俺が先輩に気にかけてもらえるわけがないのだと、自嘲気味に呟いた言葉は予想に反して先輩によって即座に否定された。だが先輩にとっての俺は、単なる制裁の対象でしかないはずだ。



「そんなの、口実だってことだ」

「……?」


口実って…なんのことだ?



「小麦ちゃんに協力してもらったんだよ。小麦ちゃんは、お前のこと、疑ってなんかない」

「え…?」


疑って、ない…?って…待て待て待て。だったら、この状況は?この状況はなんなんだよ?疑われていないならなんで俺が、制裁なんかされなくちゃならないわけ?そんなの理不尽にもほどがある…!



「じゃ、じゃあ、なんでこんな…」


幼なじみのことで呼び出されたのでないのならば、なぜこのような理不尽な事態に発展してしまったのか…不可思議すぎる。

協力してもらった…と言うくらいだから、俺に本当に用があったのは先輩なのだろう。しかし俺には、他に先輩の怒りを買うような心当たりなんてものはもちろんない。なにせ、俺は幼なじみが生徒会長だということ以外は特出したところは何一つない、善良な一般生徒なのだから。


先輩に勝てる自信があることといえば、すぐに人混みに紛れ込めること…唯一それくらいだ。だがそんなことを理由に制裁…とはならないだろう。なるわけがない。


 

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