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事実
 


「いえ、あの…」


鋭い指摘に喉の辺りが詰まるような感覚がしたが、俺が今、悩んでいること…それを瀬志本さんには言うわけにはいかない。…俺自身の問題なのだから、誰にも、言えない。



「…もうすぐ、テストがあって。ちょっと徹夜しちゃったんです」

「…小町」

「大丈夫、です」


俺は、いつもこの思い出の公園で一人考えていた。あと1ヶ月で、取り壊しになるアパートから出ていかなくてはならなくなり、新しいアパートが見つからないこと。そして、たった一人の家族である祖母が入院してしまい、その治療費を用意できていないこと。それをどう解決すればいいのか…と。

どうにかするために毎日、バイト三昧で学校にもろくに行けていないが…まだ、どちらも解決策を見つけることができていなかった。



「…あ、…お、俺、もう行かなきゃ。それじゃあ、その、体調は大丈夫ですから…心配してくれて、本当にありがとうございましたっ」


訝しげな瀬志本さんに深く追及されてボロを出してしまう前に、下手な言い訳を残して俺は逃げるように公園を後にした。


 

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