short もっと教えて 「そういえば、君、名前は?俺は、瀬志本要だ」 瀬志本さん…か。どうしてだろう、一つこの人のことを知ってしまったら、もっと他のことも知りたくなってしまう。瀬志本さんは、どんな人なんだろう、と。 俺の隣に腰を降ろした瀬志本さんを、こっそりと見上げた。きっと、優しいだけじゃなくて、仕事でも成功している人に違いない。どことなく、そんな風格がある。 「俺は…乙益小町、です」 「小町、でいいか?」 「は…はい」 男らしく甘い声に名前を呼ばれると、おかしな感じだ。鼓膜が揺れるようで、ふわふわとくすぐったい。ただ呼ばれただけなのに顔に熱が集まってしまって、俯くことでそれを隠した。 名前を教えてくれたり、名前を聞いてくれたり…もしかして、また会ってくれるのかな。今日だけじゃなく、これからも。 「小町…何か無理をしているんじゃないのか?」 下を向いたのは体調が悪いからじゃないかと心配したのか、俺の前髪を、瀬志本さんの長い人差し指がさらりと撫でた。顔色を見るためなのだろうが、それだけで、心臓が壊れそうなくらいに高鳴る。 [*前へ][次へ#] [戻る] |