short 切なる願い 第2ボタンをあげる、って約束しちゃったら…お前、会いに来なくなるだろ。 卒業まであと何日もないんだから、楠田と…どんな形でも会いたいんだよ。 「先輩、もうすぐ、こうやって会うことも出来なくなるんですよ」 そんな俺の思いを見透かしたかのように、楠田は言う。あと、ほんの僅かな時間しか、俺と楠田の間を繋げるものはないのだ。 「……そうだな」 だから、ボタンはあげられない。 ボタンを渡すってことは。 心臓に近い第2ボタン…つまり、俺の届けられない心だけを、お前に渡すことになる。 そんなの、むなしいから。 「だから、ボタン、下さいね」 「……意味わかんねぇって」 雨だからなのか、晴れ晴れとした太陽のような楠田は、今日はなんだか別人のようだ。そして俺は、やっぱり素直にはなれなくて。 卒業式のことを思うと、心臓が握りしめられたかのように痛む。 …卒業式、なんて…ずっと、来なければいいのに。 「さて、先輩はこっちでしたよね。俺、向こうなんで」 「ちょっ…傘!風邪引くぞ?!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |