short 指導開始? 何か違反してたら、ここぞとばかりに文句言ってやれたのに。 「いやー、昨日からオールしてただけー。補習とか留年とかは勘弁だから、そのまま来ちゃった。そのうち帰ってシャワー浴びるけどね」 「何しに来たんだよお前」 昨日、小西から正式に学校再建の話が出たとき、教室内には凄まじいブーイングが轟いていた。不良でも、意外と留年はしたくない生徒が多いようだ。あ、俺も便乗して、ブーイングには混ざってやったぞ。 でもな、この俺が8時に学校に来なければならねぇんだから、アイツらは文句なんか言わずにさっさと来やがれってんだよ。 「そこのお前、ちゃんとネクタイはしめろよ。ボタンは3つまで開けてよし!」 校門を気だるそうに通過していく生徒たちを引き止め、その場で服装を直させる。どいつもこいつも不満たらたらな表情だが、俺に反抗するような命知らずはいない。 「ピアスは、両耳合わせて5つまでだ。耳以外は認められない」 ちらりと日高を盗み見ると、不良相手にも毅然とした対応をしていた。臆面もなく注意できる日高は、やはり度胸がある。 「長谷川ー、校内で暴力沙汰は無しとか、マジかよ?」 「まあな。見つけたら、仲裁に入るぞ」 「なんだよ、お前がヤンキーやめてから、ちょっとは平和に過ごせてたのによ」 「大人しくしてればなんにもしねーよ」 ケンカの現場を見つけたら、だっての。何もしてない奴にはこっちだって何もしねえに決まってんだろ。 「そろそろ、門を閉めて教室に戻るぞ」 生徒たちに服装を直させていたところで、日高が門を閉め始める。 「え、もう閉めるのか」 「ああ。…長谷川、放課後、教室で待ってろ」 「は?」 放課後…何かあるのだろうか。眉間に皺を寄せて日高を見やるが、日高は俺に言いたいことだけ言って、すぐに校舎に向かってしまった。いつも去り際が潔すぎるんだよお前。 「放課後…勉強?」 そういえば、昨日そんなことを話していたような気がする。 「帰りてー…」 目の前に迫っていることから逃げるのは許せない、自分の性分を初めて恨めしく感じるのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |