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奪われる前に
 


「大丈夫だって。お前、可愛いし…暴力なんてふるわないからよ。痛くもしない。気持ち良くするだけだ」


いやいやいやっ!それはどういう意味ですかっ!そ、そういう意味なんですか?!できれば、何もしないで帰らせてくれる、って選択肢を希望します!何事も穏便にいきませんか!平和的解決が望ましいかと!



「ま、ってください…!俺は、別に…あいつとはただの幼なじみで、腐れ縁みたいなものなので…好きとかそんなのじゃないんですっ!だからですね、制裁とかは勘弁していただけたら…」

「でもなぁ、小麦ちゃんはそれじゃあ気が済まないんだよ。わかるだろ?」


なんとか弁解しないと、大事なものが奪われてしまう。そう、貞操とか、貞操だとか…。それだけは阻止しなければと頭を今までにないくらい高速回転させて、目の前の先輩を思いとどまらせる言葉をそれはもう必死に考えた。約2年前の高校受験のときでさえ、こんなに頭を使ったりはしなかったんじゃなかろうか。



「あ、あの!ええと、俺は、こういうの…全然慣れてないから、先輩も楽しくないと思います…!」

「ふーん、初めてなのか」


もしかしたら、やる気をなくしてくれるかもしれない、と正直に吐露したのだが、先輩はどこか嬉しそうに口角を上げた。


なぜここで、そんな反応をするのだろう。慣れていない方が好みだとか、嫌がられた方がむしろやる気がわいちゃうだとか、ちょっとムリヤリなシチュエーションが好きだとか…そういうことだったりするのだろうか。

だとしたら、先輩にとってはかなりラッキーなお得情報を与えてしまったことになる。…なんてことだ、逆効果だったとは…。


…あれ?…うわあ!よくよく考えてみたら、いらない暴露をしちゃってないか、俺…!正直になりすぎたよ!経験不足だとか、今はそんな、赤裸々な告白をしてる場合じゃなくて!



「あ、あの、そのですね…今の話は、忘れていただいて…」

「初めてなら不安かもしれねえけど、お前は余計な心配はしないで、俺に身を任せておけばいいんだよ」

「…え」

「さっきも言ったけど、制裁って言ったって、リンチするわけじゃないからな。その可愛い顔に傷つけたりはしない」

「わ、ちょっと…日下部先輩っ」


 

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