short 繋がる 「来たのか」 次の日の放課後、宣言通り、神宮寺は生徒会室にやって来た。信用していなかったわけではないが、どうして急にそんな気になったのかは知りたいところだ。 「あいつはいないんだな」 「今日はまだだな」 あいつ、とは先輩のことだろう。先輩も忙しい方だ、毎日顔を出してくれるわけではない。 「いつもあいつと二人きりなのか」 「まあそうだが」 「よく無事だったな」 「なにがだ?」 神宮寺の言うことは、ときどきわけがわからない。 「どう考えても狙われてるだろ」 狙われる? 「お前、綺麗な顔してるんだから、危機感は持てよ」 「なんだそれは」 だから、俺にもわかるように話せ。 「お前のデスクは俺の隣だ」 「で、この資料をまとめるのか?」 「そうだ、夏の球技大会の資料だ」 自分の席につく神宮寺に、いくつかのファイルを渡す。 「悪かったな」 ファイルをぱらぱらとめくった神宮寺は、ぽつりと謝罪の言葉をもらす。謝られる覚えのない俺は、眉を寄せて神宮寺を見返した。 「いつもここに一人なんだな、お前」 「だからお前の手を借りたいと言っただろ」 「そうだな」 これからは、神宮寺もいるし、仕事も楽になることだろう。 それにしても、やっぱり、神宮寺はこういう仕事が向いている。作業は早いし、指示してないこと以上のことまでしてくれたりと、なかなか頼りになる男だ。 「なんだ」 神宮寺の仕事ぶりを観察していると、視線が気になったのか、怪訝そうな顔でこちらを見てくる。 「いや、こうしていると、お前が女子に人気があるのもわかるな、と」 仕事ぶりは文句なしで、真面目に作業する横顔は男前だ。羨ましい。そう思っての発言だったのだが、なぜか、ふい、と顔をそらされる。 真剣な表情には思わず俺も見惚れ…あ、いや、深い意味はないが! 「お前のそれは天然なのか」 「は?」 「まったく…敵わないな」 おかしなことを言ったつもりはないのだが…苦笑されてしまった。 これからは二人で仕事をする機会もきっと増えるのだから、しっかりと意思の疎通をはかれるようにせねば。 [*前へ][次へ#] [戻る] |