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7歳差


「僕、本当は23なんですよ」
「……は?」

いきなり意味のわからないことを言ってきた目の前のイエスマンに、俺は間抜けな声上げた。
現在、ハルヒたちは寄るところがあるとかなんとかで帰ってしまい、部室には俺と古泉しかいない。
そこでたまにはなにかを賭けてオセロでもしましょう、という古泉の提案により「負けたら自分の秘密をバラす」という賭けをしてボードゲーム(ちなみに今日はオセロ)に勤しんでいたわけだが。
案の定負けたのは古泉で、奴は散々悩んだ挙句、笑顔で冒頭の言葉を発したのだった。

「ちょっと待て、話に脈絡がない。なにが、23なんだ?」
「としです。つまり僕、今23歳なんですよね」

なんなんだ、お前は。
終始ニコニコと笑顔を絶やさない古泉にそう呟く。だって、そうだろう。
そりゃあ古泉は確かに大人っぽいし物腰が柔らかいさ。
でも7歳も年上だなんて、誰が想像する?
ていうか23歳で制服に違和感がないってどういうことだ。お前はどこぞの俳優かっての。

「これでも一応恥ずかしいんですよ、コスプレしてるみたいで」
「コスプレって…」

まあ、それが本当だとしたらコスプレでしかないのだろうが…。お前、似合ってるぞ。
それにしても、機関も随分と無茶をする。よく23の男を高校一年生として学校に入れたな。
そう言うと、古泉は笑って「これでも僕が機関の中で一番年下なんです」と言った。

「それに、本物の高校生にこの仕事は少し酷でしょう?」

二コリと笑う古泉は、年齢の話を聞いたせいかもしれないが酷く大人びて見えた。
昼夜関係なくハルヒの気まぐれで作られるあの閉鎖空間に呼ばれ、学校では常に笑顔のイエスマン。
俺だったら、高校生じゃなくても発狂するね。
だって自分の人生をおかしくした少女のために、自分を抑えて笑わなきゃいけないなんて、並大抵の人間には絶対に出来ない。

「こんなこと、俺なんかに言ってもいいのか?」
「聞いて欲しかったんです、貴方に」

優しく俺の頭を撫でる古泉は、「それはそうと」と声色を真剣そうなそれに変えた。
どうしたんだ、と顔を上げると奴は真剣な表情を浮かべたまま。

「7歳年上は恋愛対象になりますか?」

バカだな、お前。本当にバカだ。
お前最初出会った頃のとき、俺になんて言ったか覚えてるか?いきなり「超能力者です」だぞ。
それでも今の「恋人」という付き合いがあるというのに…、やっぱバカだろ。

「そんな顔しないでくださいよ」
「元からだ」
「嘘ばっかり」

くすくすと笑う音が、心地いい。
ああ、知ってるさ。本当にバカなのは古泉が俺のこと信頼してるって分かって喜んでる俺なんだってことくらい。
だから、なにもかも見透かしたように笑うな。



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