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HQ夢小説
春をつかまえて。澤村

休憩の時間になり、清水と春子は急いでモップがけを行っていた。
直前に作ったドリンクを部員は満足そうに飲んでいる。
10分の休憩が終わるまであと4分のところでモップを片付ける。
ふう、と息をついた二人の元へ主将の澤村が向かった。

「二人ともモップお疲れ様。」
「お疲れ様。」
「お疲れ様です!」
「あのさ、最近ドリンクのタイミングが良いっていうか、なんであんなに冷えてるんだ?」

冬でもあるまいし、と澤村は微笑む。
普通ドリンクは時間のある時に作り置きしておくため、最近のように暖かい日にはぬるくなてしまうのだが、ここ数日、休憩中に飲むそれはちょうどいい温度に冷えている。
部員は面白おかしく不思議がっているが、澤村はマネージャーの気遣いだと気づいていた。
えっと、えっと、と春子が言いにくそうにしているのを見た清水が口を開いた。

「春子が言ってくれるのよ。」
「そうだったのか。」
「あえ、えっと、実は・・・ああ先輩・・・」

自分の役目を果たした清水が先生のための椅子を用意しに行ってしまった。
気まずそうに縮こまっていく春子に比例して、澤村の黒い笑みが増していく。

「あの、わざとじゃないんですけど、澤村先輩の様子を見てると何となくわかるっていうか・・・!」
「俺の様子?」
「!」

ずい、と近づいてきた顔に思わず飛び退く。

「すみません!すみません!練習中に見てるんです!先輩のこと!」
「へえ。そんなに見ててくれるのかあ。照れるなあ。」
「う・・・すみません。」

本当に照れたように頬をかく澤村を見て、春子は申し訳なさそうに一歩下がる。

「いや、謝るなよ!もしかして俺が時計気にしてるの知ってるのか?」

澤村は以前から部員全員の様子と時間で休憩時間を決めていた。
その日によって異なるその時間に、たまたまタイミングを合わせるなんてできるはずがなかった。

「あ、はい。皆の息があがってくると先輩が時計を気になさってるので、清水先輩にドリンクを作りましょう、って・・・言ってるんです・・・」

つまり、入部してから今までで、休憩時間と澤村の様子の関係を見極め、タイミングを計っていたのだ。
その観察力に澤村は心から感心する。
ついに俯いてしまった春子の頭に手を乗せた。

「ありがとな、春子。俺は平気だからこれからもよろしく頼むよ。」
「あ、ありがとうございます・・・これからも先輩のこと見ていいですか・・・?」
「ああ、もちろん!むしろ俺だけ見てくれて構わないからな。」
「ええ!」

思わず顔を上げると、思いのほか近くに澤村の顔があり、頭をなでられたことによってもともと赤かった春子の頬がさらに赤みを増す。

「かかからかわないで下さいよ・・・!練習頑張ってください!」

顔を両手で隠しながらそう叫ぶとたた、と清水の元へ駆け寄った。
そんな春子の後姿を見ていた澤村は満足そうに微笑んだ。




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