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酔っ払い


…あ〜あ…。
旦那、完全に酔い潰れちゃったよ…。

一部始終を密かに見ていた佐助は、畳にとっぷしている主人を痛々しげに見つめる。
この様子では、きっと明日は二日酔いで布団から出てこれないだろう。



幸村は酒自体は好きなようで、宴会などの賑やかな席では羽目を外して結構な量の酒を飲む事もある。だが、晩酌の習慣は無く普段酒を口につける事は少ない。主人の頭の中は、酒よりも団子と師の事で埋め尽くされているのだろうと思う。

そんな幸村の自棄酒を見るのは、佐助も今日が初めてだった。

席を外していた小十郎が戻ってきて幸村の頬を軽く叩いているのが目に映る。


「猿。見てねぇでこいつを連れていけ」

政宗の呼掛けに数秒間を空けた後、佐助は姿を晒した。

「はいはい。って…俺様がいるの気付いてたの?」
「Ha!!気配も消さねぇ忍が良く言う…。どうせそうやって見てるんだったら、お前が介抱した方が合理的だろ?」
飄々ととぼける忍に政宗はうんざりと言った様子で盃を口に運ぶ。

「ところで、そいつに嫁ごうっていう肝の据わった女はどこのPrinceだ?」

「あ〜…いくら竜の旦那でも、俺様の口からそれを言う訳にはいかないなぁー」
武家の間で行われる結婚は政治的な意味合いが強い。今は同盟国とはいえ、一国の総大将に情報を漏らす訳にはいかない。

それにしても、南蛮語混ぜて話すの止めてくんないかなー…。

だいぶ慣れたが、独眼竜との会話は、前後から内容を理解しなくてはならないので面倒だ。


政宗は佐助の答えなどはじめから宛てにしていなかったようで「どんな女か見てみたかったのに」と機嫌良く喉を鳴らす。

「…政宗様!まさか…」
「心配すんな小十郎。相手が誰だかも分からねぇんじゃぁ手の出しようがねぇ」政宗は睨んでくる小十郎を愉快そうに見やる。


「…竜の旦那。最低」
酔っているのか、政宗は佐助の侮蔑の視線に更に気を良くした風に見える。

「それより猿。介抱に必要そうな物は部屋に準備してある。どうせこいつにあてがった部屋もSearch済みなんだろ?俺はまだ飲み足りねぇんだ。小十郎、付き合え」
「…はい」

「…まぁ、俺様、優秀な忍だから、旦那の部屋くらい確認してるけどさ…俺様を放置してても良いの?」

「確かにそうだが…今更だ。それに、うちにも草はいる」

「まぁ、そうだね」

佐助は大方主人の着物を整え終えると、ぐったりとしたその体を抱き抱える。

「悪かったな。真田を飲ませすぎた」
小十郎が詫びてきたので、佐助はとんでもないと慌ててかぶりを振って礼を言う。


佐助は部屋を後にした。

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