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暁の空
4
「僕は、僕が眠るところを見られたくないんだ。」

せめて、
せめてあの人に残るのは
綺麗なままの僕でいてほしい。

痩せ細って頬がコケて、
顔色が最悪な僕なんて見られたくない。

きっと忘れてくれなくなるから。
優しいあの人は前に進んでくれなくなるから。

だから、会わないと決めた。


「ねえ、兄さん。」

「なんだよ。」

「僕のこと忘れないでね。」

「当たり前だろ。」

「僕の好きなものをお供えしてね。」

「わかってるよ。」

「兄さん。」

「なんだようるせえな!」


気づかないフリをしてあげるよ。

僕よりも低い声が震えていること、
傷だらけの手が力いっぱい僕の手を握っていること、
憧れ続けた体格を丸めていること。

両親が手を取り合って必死に目を背けずにいてくれていること。

僕は僕と向き合おうとしてくれることが何よりも嬉しいんだ。

僕があの人と向き合い続けてきたのに、
最後の最後で逃げ出してしまったから。

この瞬間が来ることが怖くて、
来るとわかっていた別れを受け入れたくなくて
都合のいい言葉を並べて言い訳をする。

そんな惨めな僕を暖かい瞳で見守ってくれたことが僕を傷つけて、救ってくれたんだ。



「父さんと母さんを、よろしくね。」

「言われなくてもわかってる。俺たちはお前をちゃんと!これからもずっと……っ…」


愛してる。



愛されたがりの僕が
最期に聞いた言葉はとても贅沢な愛だった。


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