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いびつなから


何時だったか、真っ暗だったその空間に月明かりと共にもう一つの存在が現れた。蹲っていた体を起こし、瞼を上げる。そこには男がいた。独特の雰囲気を放ち、危険な匂いを纏って、月明かりに照らされている。

「お前、ここを出たいか?」

「…どうして?」

「俺の質問に答えろ」

その彼の瞳が私を捕らえる。じっと痛い位の視線が刺さる。どっちでもいい、口を静かに動かして目を伏せた。だってここにいたって外に出たって意味のない事でしょう?私の存在全てが無に等しいんだから。暗闇に足音が響く。だんだん大きくなって、不意に腕を強く捕まれた。

「…っ、なに」

怖い。小さな震えが全身を走った。恐る恐る顔を上げると男はにやり、と卑しく口角を吊り上げた。そして私の腕に爪を立てる。怖くて、痛くて、でも何故か涙は出なかった。その痛みに歯を食い縛って目をぎゅうっと瞑って耐えている自分がいる。

「ククッ、お前従順だな」

満足そうな表情を浮かべて、彼は歩きだした。引きずられる様に連れてかれ、望んでいないのにいとも簡単に外に出された。相変わらず彼は卑しく笑い、その名を"高杉晋助"と名乗った。

幽閉生活が一変する、まるで変な夢をみているみたい。







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