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黒の教団編
貢ぎ物に最愛を込めて



さて、困ったことになった。


女性団服を調達するには科学班の誰かしらに声を掛けなければならない。


だが、そんなことすれば手柄を横取りされるだろう。冗談じゃない。


「なんとか調達する術を見つけよう。じゃないと他の誰かに先を越されかねないぞ」

「ああ、必ずどこかに糸口があるはずだ」


最早、アレン殿が喜ぶ云々の話から反れてしまってるが今の俺たちにはそれに気付く余裕はない。



「しかしなぁ………」

「うーん……」



女性エクソシスト自体が極少な現実。どうしたって方法らしい方法が思いつかない。そもそも団服の予備があるのかさえ怪しい。


作戦は志し半ばにして行き詰まってる。



「どうかしたの?」

「「うわわゎぁっっ!!?リリリ、リナリー殿っ!?」」



背後からポンッと肩を叩かれ、二人の心臓は飛び上がった。俺たちの大袈裟なリアクションに、声を掛けた方もびっくりしていた。大粒の黒曜石の瞳が呆気にとられていた。



「あら、驚かせちゃったかしら。ごめんなさい」

「い、いぇっ。こちらこそ失礼しましたっ」

「何か御用でしょうかっ!?」



アレン殿に次いで年少組のエクソシストであるリナリー・リー殿だが、教団所属暦はかなり長い。聞くも涙、語るも涙の壮絶な人生がそこには存在しているのだ。加えて可憐な容姿と気配り屋のコンボが付加されているから彼女を嫌う人間はいない。ただ、あからさまに絡めないのは兄君が恐ろしいからである。



そんな黒の教団御三家と称されてもおかしくない人気を博す彼女は大きな紙袋を抱えていた。



「それは?」

「こないだ新調した団服のデザインサンプルの余りなの。私には少し大きいし、他に着る人もいないから処分をお願いしたくて」

「「……………………」」

「頼めるかしら?」

「「喜んでっ」」



即決即答、マッハの勢いで紙袋を受け取った。慇懃にお礼を言ったリナリー殿に罪悪感を覚えないでもないが、こんな神の気まぐれは二度もこない。ありがたく頂戴するに限る。



「よし、ラッピングだ」

「急ピッチだからリボンだけで譲歩しよう。やっぱピンクかな?それともスカイブルー?アニタ様にもっと恋愛の何たるかを学んでおけばよかったぜ」

「全くだな。海の男はこれだからいけねぇや」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……リナリー、わざわざ作らせたんだろ?」

「けっこう前にね。だっていついかなる時も演出家は必要でしょ。さて、アレンくんの近くで見学しなきゃ♪カメラ、カメラ〜」




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