黒の教団編
Foppish boy
*Foppish boy*
この教団にやってきて姉ちゃんが二人出来た。
対称的な容姿をしたアレン姉ちゃんとリナリー姉ちゃんは、かなりモテる。
毎日毎日、贈り物をする野郎共が後を絶たない。受け取る側の二人はたいへんな迷惑を被ってるみたいだけど。
今日も両手で抱えきれないほどのプレゼントの山に、揃って溜息を吐いてた。
俺はそんな姉ちゃん二人の荷物運びのお手伝いだ。こんもりと花束を抱えて歩いてるから、視界が悪い。
足元が見えないせいで何回も荷物を落としちゃってるけど、姉ちゃんは『あー?別に落として踏んでもいいよ。なんならぐっちゃぐちゃに踏み躙っちゃってもいいよ』って。
いらないなら貰わなきゃいいのにとは、怖いから言わないけどさ。
「姉ちゃんたちは何を貰ったら喜ぶの?」
気になって質問したら、諸々の本音が飛び出してきた。
「花ばっか贈られても困るんですよね。飾る場所が限られてるし、水やりもしなきゃだし。蝋花さんみたいに食べ物をくれる方が万倍嬉しい」
「私は物なんていらないから、その心身を捧げてほしいわね。私と兄さんに対して献身的な人が理想だわ。もっとぶっちゃけるとモルモットが欲しいわ」
「リナリー姉ちゃん、怖いよ」
そんなイイ笑顔を向けられても、対処が出来ないんだけども。
「うふふ、ティモシーがやってくれるなら、お姉さん優しくするわよー」
「んな、なっ、何言ってんだよっ。いいい、いやだよっ」
「ちょっとリナリー、子供相手にそのネタはキワドイですよ。ところでティモシー、本命で困らないようにアレン先生と保健の授業をします?」
「……………っっ!!!」
遊ばれてる。完全に遊ばれてる。
姉ちゃんたちから大人の余裕が見え隠れしてるよ。こうゆうの魔性の女って言うんだよな。
沸騰した頬っぺたを掌で揉みながら、ぶーたれる。反応するから遊ばれるんだと分かってても、年上美人にからかわれたら、俺みたいに免疫のないちびっ子はそうなるに決まってる。
「あ、神田発見。ちょっと行ってきます」
「「行ってらっしゃーい」」
アレン姉ちゃん凄い。
廊下の先に何メートルも離れてる神田兄ちゃんを瞬時に見つけちゃったよ。しかも速い。あれだけの荷物抱えたままなのに、もう兄ちゃんの目の前に到着しちゃったよ。
向かう方向は同じだけど、なるべくゆっくり歩いて二人に時間を作ってあげた。
兄ちゃんは鍛練の帰りらしく、胴着姿で腰に六幻を挿した楽な格好をしていた。
プレゼントの山を忌々しく眺めた兄ちゃんは、自然な動きで姉ちゃんから荷を取り上げた。あの荷物を片手で積み上げちゃうから、兄ちゃんは格好良い。
ちょっと不機嫌なのは、姉ちゃんへの妬きもちだと思う。
「あらま、あの神田がプレゼント攻撃してるわ」
「え?」
「ほら見て」
リナリー姉ちゃんに言われて目を凝らすと、確かに兄ちゃんが何か差し出してた。
遠目からでも鮮やかな黄色が確認できる。飾り気も何もあったもんじゃないソレは、ドコにでも生えているタンポポだ。しかもついさっき引っ込抜いたであろうことが伺えた。
「あ………」
手の込んだアレンジメントも、ラッピングもされていないその花を受け取った姉ちゃんは柔らかく笑って頬を染めた。
ああ、そっか。
姉ちゃんは兄ちゃんから貰うプレゼントが嬉しいんだ。
「ティモシーもエミリアに何かあげてみたらどうかしら?」
「う、……でも、喜んでくれるかな……」
「好きな人からの贈り物なら、嬉しいに決まってるわ。目の前に、イイ例がいるでしょ」
そうだけど、俺は片想い中なんだよ。お礼にキスとか期待できないじゃん。
つーか、姉ちゃん。廊下でチューすると影の人に怒られるよ。
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お花のお礼にほっぺちゅー(笑)
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