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黒の教団編
Obstinate boy



相手がどんなに怖くたって、逆らってやる。譲れないもんは譲れないんだ。



*Obstinate boy*



麗らかな昼下がり。
廊下の片隅に円陣を作った異様な集団がいた。自分もその中に含まれてるけど、その光景は確かに異様だから否定はしない。


幼い上に新米ペーペーの俺は周りの大人たちの会話を見上げるように聞いていた。


「意見を曲げる気はねぇんだな、クソ兎?」

「何と言われたって俺の意志は変わらないさ」

「てめぇ、実は頭空っぽだろ」

「ユウに言われたくないさっ」

「いや、ラビは空っぽである」

「っす」

「クロちゃんもチャオジーも酷くねっ!?」


神田さんに睨まれ、周りから馬鹿にされてる赤毛に眼帯の陽気な青年はラビ。

ヒョロヒョロして今にも倒れるんじゃないかってぐらい貧弱そうなのがクロウリー。

神田さんの横をキープして尊敬の眼差しを送ってるのがチャオジー。


少しずつ名前を覚え始めたはいいけど、ここの連中って総じてキャラが濃い。


みんなそれぞれ螺旋が一本抜け落ちてる。じゃなきゃオイル不足で色々と機能が低下してる。とにかく、俺は猛烈にコミュニケーションを学習中だ。



「てめーらも分かんねぇ奴だな。モヤシが段違いだろうが。あいつの周りにゃ愚かな獣ばっか寄り付いて危なっかしいったらねぇ」

「私は人気などなくともエリアーデ一筋であるっ」

「コムイがいるから表立って騒がれないだけさ。リナリーを付け狙う不届者は多いんだからな。毎日、影で沈めるのだって大変なんさっ」

「てめぇ、んなことしてたのか。キモい野郎だな」

「キモいって言うなぁぁぁぁっ!!」

「そういえば最近、探索部隊で怪我人多いってマオサ先輩がボヤいてたような………あ、俺は神田さんが一番っす!!」

「気色悪ぃこと抜かすな。てめぇは黙ってろ」


いい加減、首が疲れてきた。
揃いも揃ってデカいっつーの。
ああ、でもチャオジーだけは違うな。ガタイはいいけど比較的チビだと思うもん。


つーか、神田さんに罵られたのに何でそんな嬉しそうなの?
怒鳴られてない俺だってビビったのに。



「新人、お前は?」

「えっ、俺っ?」


いきなり話を振られて、俺は瞳を白黒させた。膝を折って、俺の両肩をガシッと掴んだラビは必死に諭してきた。


「ティモシー、正直に答えるんだ。ユウが怖いからって意見を選ぶ必要なんてないんだからなっ」

「黙れ、ボケ兎。どいつもこいつも、一目瞭然だってのに選択の余地がどこにある」



そう断言する神田さんは同じエクソシストのアレン姉ちゃんと付き合ってる。お互いがベタ惚れしてんのは見てて分かった。時間があれば二人でいるし、姉ちゃんの前だと神田さんはちゃんと笑うから。


そのアレン姉ちゃんは教団内で『白百合の君』って異名もあるほど美人で可愛くて優しくて………とにかくアイドルみたいな存在だ。


俺も、もちろん姉ちゃんのことは大好きだ。だけど………



「絶対にエミリアっ。エミリアが一番可愛いんだよっ!!」

「よく言ったさ、ティモシー!
それでこそ男だっ」



ったりめぇだぃ、俺だって強いんだからな。膝が笑ってるのは見ないふりしろよ。


「おぃ、ラビ」

「先に言うけど、俺に八つ当たりとかヤメロよ」

「それは後でする。エミリアって誰だ?」

「「「「…………………」」」」



神田さんって誰よりも早くエミリアと接触したはずだろ。何で覚えてないの。姉ちゃん一筋で他が眼中にないのは分かるけど、仲間になった人間くらい把握しようよ。



「ユウ、俺だって探索部隊の名前を覚えろとは言わんさ。だけど、最低限の人付き合いはしとこうぜ。エミリアってのはガルマー警部の愛娘で、ティモシーの専属家庭教師として入団したカワイコちゃんさ」

「……………ああ、アレか」

「物みたいに言うなよぉぉっ。
ピェェ――――ン」

「男が泣くんじゃねぇ」

「………ユウ……アンタ、鬼さ」

「クロウリーさん、俺はいつ喋っていいんっすか」

「神田の機嫌が戻るまではダメであるな」

「チャオジー、五月蠅ぇ」

「っす」



俺が泣き喚くと、今度は神田さんが膝を折って目線を合わせた。
黒い瞳にジッと見られると涙は一瞬で引っ込んだ。


ラビも格好良いけど、神田さんは別格だ。男に言っちゃダメなんだろうけど、すっごい綺麗。



「よし、泣き止んだな」

「う、……ぁ、はいっ」

「なかなか骨のあるガキだな。モヤシが気に入るわけだ」

「…………?」



鼻を啜った俺の頭を神田さんがわしゃわしゃと撫でた。兄弟いないから何となくだけど、兄貴ってこうゆう存在なのかもしれない。


「まぁ、モヤシを選ばなかったことについてはラビをブッ飛ばすから不問にしといてやろう」

「ちょっとぉぉぉぉっ!?アレ、マジだったんさっ!!?」

「俺は冗談は好かん」



そう言って、神田さんは指の骨をバキバキ鳴らした。戦闘本能が疼くのか、凄い黒い笑い方してる。絵本でみた魔王みたいだ。


「死にさらせ、カス兎っ」

「だぁぁぁっ!!?ストップ、ストップゥゥ―――ッッ!!」


―――ドッシャァァァァンッ!!


ただの組み手なのに技の決まり方が派手だなぁ。うわ、すっげぇ。人間ってあんなに吹っ飛ぶんだ。


「…………兄貴か……」



演舞みたいに優雅な組み手を眺めながら、何かいいなって思った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「よかったわね、エミリア」

「……………っ////」

「なかなか頼りになりますね、ティモシーって」

「それにしても、あのバカ共は何がしたいのかしら」

「……と、止めなくてもいいんですか?」

「「うーん……いいや、面倒臭いから」」

「そ、そう………」




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あきゅろす。
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