黒の教団編
Frightened boy
*Frightened boy*
「お昼は神田と同じ天ぷら蕎麦にしようかなぁ」
「朝飯食ったばっかだろ」
「食は生きる活力ですよ。さすがにリンクみたく過度の糖分摂取を見てると胸焼けしますけど」
「聞こえてますよ、ウォーカー」
「はいはい、すみませんね」
五月蝿いよ、影の人。
これだから真面目優等生キャラはダメなんだよ。冗談一つで説教食らっちゃ堪らない。
「それより、あなた方はモラルを守った健全な付き合いをして下さい。往来でイチャつくなど言語道断です」
「モラル……?」
神田と目を合わせて、嘆息する。ただ単に手を繋いでただけでモラルを説き伏せられるとは思わなかった。そんなこと言ったら、米英の挨拶をさせないつもりなのか。恐るべし、リンク。並みの純朴少年じゃないですね。
「お前……ど、」
「うわわぁぁぁっ、神田っ!!
それは禁句だからっ、言っちゃダメだからっ!!」
そっちの経験がなくとも逞しく生きれる。だって、19歳できちんと管理職に就いて、上官からの信頼も厚いじゃないか。ほらごらんよ、経験がなくともリンクは立派に生きてるよ。経験がなくともっ
「………ウォーカー、私はあまり俗世間の言葉を好みませんがブッ飛ばしますよ」
「怖いなぁ〜」
「なら、それらしく言ってやれ」
やだし、演技って疲れるもん。早々にキャラがバレちゃったから、リンクの前でも地で行くって決めたんです。
ギャーギャー喚くリンクをからかいながら歩いていると、前方から駆け足で来るちっこい物体が。
「アレン姉ちゃん、こんちはっ。ホクロの兄ちゃんも、こんちは」
「はい、こんにちは。挨拶ちゃんと出来てエラいぞ〜」
「あ、ちょっ、ヤメロよ――っ」
それは出来ない相談だなぁ。出会い頭にちんまりした少年からペコリとお辞儀されりゃ、抱き締めたくなるって。
「ブックマンJr.にも『ホクロ』と言われて続けてるので今更ですが、私の名前についてのツッコミはなしですか?」
うん、なしの方向で。特徴的なあだ名でいいじゃないですか。少なくとも『モヤシ』よりかはマシ。
しかしまぁ、子供体温っていいよね。手とか頬とか、すんごいぬくい。きっと、冬場に重宝されるよ。で、夏場は低血低体温の人(ってゆーか、もう神田限定)に引っ付いてたい。
「ぁ………」
「ティモシー?」
サササッと摺り足で僕の背中に隠れたティモシーは、そのまま団服の裾をキュッと掴んで、遠慮がちに顔半分を出した。
「…………………か、神田さんも………こんにちは……」
消え入りそうな声で言ったティモシーは若干、眉が下がり気味だ。無理もないか。ファーストコンタクトで『引き摺ってでも連れていく』なんて誘拐まがいなこと言っちゃったし、子供から見たら目つき悪い仏頂面の悪人風情だから。
「……………」
「ほら、神田。挨拶されてるんだから、返すのが礼儀でしょ」
「………ああ、コンニチハ」
「ギリ及第点ってとこかな。片言だけど許してあげてね、ティモシー」
「ぅん。じゃあ、またなっ」
何やら急ぎ足で駆け去ったティモシー少年。
勉強のボイコットは困りものだけど、つくづく、いい子だよ。
「大分、懐かれてんだな」
「まぁ、社交性はありますから。弟が出来たみたいで嬉しいなぁ」
「その点、神田ユウはビビられてますね」
「それはしょうがないでしょ。目付きも口調もキツいし、不器用だし。追々、慣れてくしか道はないですよ。ほら神田、そんなに気を落とさずに」
「別に気落ちなんざしてねぇよ。ただ、あのチビとのスキンシップは許されるのは不公平だろ」
あ、そっか。
9歳のちんまいとはいえ、ティモシーは戸籍上は男の子。挨拶代わりのハグのつもりだったけど……
「もしかしてアウト?」
「ティモシーはいいですよ。子供だし抱き付いても厭らしい印象を受けませんから」
「あ、いいんだ………厭らしいって何がです?」
「あなた方二人がです」
違いますよ。厭らしいのは神田だけでしょ。歩くたび色気振りまいたりして。
「神田がエロくなくなったら道端でチューもあり?」
「神田ユウ次第でしょう」
「やった♪聞きました、神田?
目指せ☆脱エロキャラですよっ」
「モヤシ……てめぇは俺をなんだと思ってんだ……」
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むっつりフェロモン?(笑)
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