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黒の教団編
自分を守るのは結局、自分。



俺は中立を生きる者。
裏歴史の記録を生業とし、常に世界の影に潜む者。

………なーんて、素敵設定のことなんかすっかり忘れられてる。



「ラビの翡翠の瞳は深緑の癒しを備えてるな。少年の白銀の瞳と甲乙つけがたい」

「あーそう」

「痩躯だけど筋肉のつき方はしなやかだな。女特有の柔らかさはないが、無駄がない分、綺麗だ」

「あーそう」



あれからしばらくの間、現れなかった(アレンとユウが半殺しにしたから)天パのノアが最近、また出没し始めた。


そう……何故か、俺のもとに。


読書の横でナンタラカンタラ口説かれて、隙あらば太腿を撫で回してくるから落ち着かない。


くそ、こんなことなら爺と別行動しなきゃよかった。


「なぁ、ラビ………」

「のぎゃぁぁあっ」



耳舐められた、耳舐められたっ、ペロって……っ!!


「っ、キモいさぁぁぁぁぁぁあ―――――っっ」


咄嗟に持っていた古書(900ページある大作)の角で変態の後頭部を殴り付けた。


「ぬごぉぉ!?」


一回じゃ生温いのはアレン達を見て実感した(だって、こいつ全治2ヶ月ありそうだったのに1週間で全快しやがった)から、何十、何百、自分の体力が持つ限り殴り続けた。


「はぁ、はぁ……っ、はぁ……」


やがて、体力が尽きた頃には、古書の角が変形していた。血も染みている。


や、やっちまったさ……。


どす黒い血の海に横たわる変態の亡骸(決めつけ)の前で、徐々に思考が戻ってきた。


ヤバい、どうしよう。俺ってば、人殺しデビューさ。あ、でも、ノアだから殺していいんだよな。いやいや、だからと言って、こんな残虐かつ間抜けな展開でいいのかっ?こうゆう場合、死体は山中に遺棄して………



「ふぃ〜、ラビも案外、激しいのな」

「―――――っ!!!!?」


血の、血まみれの、スプラッタの………っ。


「なんで生きてるんさぁぁぁぁっっ!!!?」


血に染まった床の上で、顔面血液ダラダラの色黒男がニヤリって笑った。


「なんつーかな、俺には死ねねぇ理由がある。愛ゆえに」


尚も頭部から血が吹き出してるのに普通に口聞いてる。どうゆうことだ。ノアは曲がりなりにも人間だろ?そこは守れよ。


「ん?どうした、ラビ。固まって」

「ティキ、……ミック……」

「おお、名前で呼んでくれるのか?嬉しいねぇ〜」

「し、」

「『し』?………そうか、シテ欲しいのか。そうか、そうか、続きをご所望なんだな。まかせろ、俺が手取り足取り………」


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――っっ!!!!!」





――前略、親愛なるリナリー。


俺には奴を掌握できそうにありません。
無理です。明らかに失血死に至るレベルのはずなのにピンピンしてるんです。
広がる血の海でペラペラ喋る姿は、そんじょそこらのホラーよりも怖いです。
俺は精一杯戦って、男としての貞操を守ろうと思います。
期待に添えなくて、ごめんなさい。腑甲斐ない俺を許して下さい。



PS.アレンに伝えて下さい。確かに奴は殺る気でいかないとダメージをまるで与えられませんでしたと。




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あきゅろす。
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