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黒の教団編
Cheeky boy



子供はちょっとばかし生意気な方が可愛いもんだ。



*Cheeky boy*



「あっ、アレン…姉ちゃん…っ」


任務が入り、地下水路へ向かうため廊下を歩いていた僕の後方から、小さな男の子が駈けてきた。



「あれ?ティモシー。もう勉強は終わったの?」

「それはいんだよ。勉強なんてしなくたって死なねぇもん」



そう言って、新米エクソシストは腕を組みプイッとそっぽを向いた。スカイブルーの猫っけが心なしかピコピコ動いて見える。
超、触りたいんだけど。



「あのさ……えっと……あ〜…、う〜……」


組んだ腕を解いて横っ腹をパタパタ叩いたり、頬を掻いたり、なんだか忙しない動きをしたティモシー。わざと不機嫌そうな顔を作って照れ隠しをしてる姿は、どっかのでっかい黒猫のよう。



目線を揃えて、柔和に微笑んで問う。


「なぁに、どうしたの?」

「こ、孤児院でさ…姉ちゃんが傷だらけになって助けてくれようとしたのに、俺八つ当たりした。……自分勝手してたは俺なのに、全部、人のせいにしようとした……」

「…………うん、それで?」

「ごめんなさい……っ」



ギュッと瞳を瞑って、絞りだした声は反省の念が滲み出ていた。
リナリーもそうだけど、幼い子供を無理やり家族と切り離しているのは教団側なのに、ちゃんと自分なりに考えているんだな。


ティモシーはもう悲観せず、反省さえ出来ている。その姿は微笑ましくもあり、新しい仲間として誇らしくもある。


「ティモシー」

「ぅ、……っ」



怒られると思ったのか、躯を竦めたティモシーを僕は屈んで優しく抱き締めた。


「よく出来ました」

「う、ぁっ、アレン姉ちゃん!?」

「ちゃんと『ごめんなさい』言えたね。エラいエラい」

「やめろよ、姉ちゃんっ!ぐぇっ、苦しい……っ」



反抗的なセリフを吐きつつも、その顔は真っ赤。エミリアの胸は揉めても、他の女には免疫0だな。あ、院長先生も別枠か。


「可愛いなー。しかも、あったかいよー」

「はーなーせーよーっ」

「ウォーカー、時間がありませんよ」

「はいはい、しょうがないな」


影のように付き従う監査官がわざとらしく咳払いして促したので、名残惜しく頭を撫でて、ティモシーを解放した。



「それにあんまり他の男とイチャつくと怒られちゃうからなー」

「へ?」

「こっちの話だよ。ね、ティモシーはエミリア一筋だよね?」

「な、なななっ、な、何で、エミリアがっ!?」



うーん、テンパり方がベタ過ぎるかな。それにしても年上の彼女か……やるね、イマドキの子は。



「それならいいんだ。僕らはもう行くけど、くれぐれも気を付けるんだよ」

「き、気を付けるって?」

「すぐわかるよ。助けてあげたいけど今日はこれから任務なんだ。ごめんね」

「う、うん??」

「行こう、リンク」



去りぎわにもう一度、スカイブルーの髪を撫で回し、僕は任務へ向かった。


後日、白百合に抱擁を受けたティモシーが、嫉妬に刈られた探索部隊ズに闇討ちされたのは隠れた事実である。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ティモエミブーム到来。



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