黒の教団編
その頃の俺様
屋根を飛び飛びにして疾走をしていた神田だったが、人目につき過ぎるので路地裏に逃れていた。
体力を温存するために身を潜めながら恋人の捜索をしているが、如何せんアレンはゴーレムを所持してないので居場所が辿れない。
その上、入り組んだ構造は先の戦いで実証済みなのだ。俺はこの街で仲間を喪っているのだから。
あの時はゴーレムを所持していたにも関わらず、同輩と落ち合う事ができなかった
「チッ………」
つまらない事を思い出してしまった。以前の神田なら戦争の中での犠牲など顧みなかった。
封じていた情を再び思い起こさせたのは、やはり愛する者の影響であろう。
柄にもなくセンチメンタルな気分になると、どうにもこうにもアレンに逢いたくなる。
小さくて細い躯も、白銀の髪や瞳も、あどけない微笑みも、敬ってるのか疑問を感じる言葉しか吐かない敬語口調さえも、全部、全部、
―――抱き締めたい。
子供が欲しいと言っていた。珍しく強請ったものが、よもや赤子とは思わなかったので度胆を抜かれたのは事実だ。
『………この戦争の最中に不謹慎かもしれない。それでも、家族が欲しいんです。神田そっくりの赤ちゃん………』
頬を淡い薔薇色に染めて、その言葉を口にしたのは、もう随分前のことだ。最近はお互い戦地に赴いていたので営みの時間が稼げなかった。
叶えてやりたいし、叶えたい。
自分自信、家族を求めるなんて夢にも思わなかったが、アイツとなら悪くない。だから、何としてもこのゲームは勝利を収める。
気力も体力も十二分にあるのだ。
だが……………
「何処だ、ここ」
―――誰か道を教えてくれ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あげてあげてあげて、落とす。
そんな神田が好き。
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