黒の教団編
暗黒白百合
「よしっ、これで十五軒目か。下準備にしては上々かな♪」
意気揚々と罠を仕掛けていたアレンは額に滲む汗を拭った。
ココの仕掛けはなかなか派手だから銃器かライターを所持してる人がハマってくれると、とても嬉しい。
既に二時間は経過したが、街中は変わらず静かなままだ。遠く離れた方で銃声や怒号が飛び交ってるようだが、まだ遠い。
個々の専用無線ゴーレムを所持しないアレンはハンター共から居場所を辿られることはないが、同時に神田との連絡もつかない。これはかなりイタイ。
至る所に監視用のゴーレムが飛び交っているからコムイとリナリーには居場所が割れているだろう。
あの二人は主催者サイドだから、時間が経てば、盛り上げるためにハンターに情報を流すのは必須だ。その前に二人揃って戦えるようにしたい。
(そういえば武器がないなぁ……)
左腕は使えないし、相手が人間だから左眼も役に立たない。今のアレンはただのか弱い小娘だ。
「……銃でも剣でもあった方がマシだよね」
……………奪うか。
建物の影から大通りを見回すと複数のグループを編成して走り回る隊員の群れがあった。
大の男五人はキツい………せめて三人ぐらいなら勝てる。
その場をやり過ごし恰好の獲物を捜し出す。ライフルは邪魔だし、狙うなら小型の銃がいい。あとは投擲ナイフとかでもいいな。剣は使い慣れてる『神の道化』じゃないと扱いにくそうだ。
「お、手頃なカモがいる」
ニタリと笑い、姿勢を落とす。
こちらに向かって歩いてくるのは弱々しげな探索部隊の男。しかも単独のようだ。小脇に銃を携えた上に、太腿にはナイフホックもぶら下げている。
男がアレンが隠れていた建物の角を覗き込むより速く、物陰に引き摺り込む。
「――――――ウグゥッ!?」
腹部に一発。
拳を叩き入れ、気絶させる。
「チョロいもんです」
ぐったりと項垂れた男の手から落ちた銃を奪い、ナイフもいただく。ついでに懐を漁っていると、気絶したハズの男がアレンの細腕を掴んだ。
「…………っ!?」
――しまった、フェイク!
気付くのが僅かに遅かった。アレンの背中に金属音が擦れた。冷たい感触に身を硬くする。
数人の隊員に囲まれ、アレンは小さく舌打ちした。
「ウォーカー殿、ご同行願えますか?」
リーダー格の男が厳かに尋ねてきた。この状況において尚、遜った言い方にイラッときた。
――さて、どうしたものか。
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ピンチ?
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