黒の教団編
激闘開幕
「ユウには悪いけど、絶対に捕まえてみせるから♪」
「はっ、アイツは俺にしか飼い馴らせねぇよ」
親友の青年に一笑し、神田は首を鳴らした。
太陽のように眩い赤毛に鱗模様のバンダナ。海賊まがいの眼帯で右目を覆った青年は己の欲望を隠そうともしない。
猫耳だとか犬耳だとか、はたまたナースだとか変態丸出しの単語をうわごとの様に呟かれ、脳内で自分の恋人が凌辱されていると思うと、長年の付き合いにせよ切り刻んでやりたくなる。
「はーい、それではハンターの皆さんもカウントを開始しまーす。30、29、28………」
コムイのカウントが始まった。
―――――殺気。
数々の戦闘を潜り抜けてきた神田は周りの連中から、ものっそい殺気に満ちた気配をヒシヒシと感じ取っていた。
イノセンスを使えない生身の内に集団でボコるのは……まぁ、妥当だろう。
六幻は半日使えない。
丸腰で相手をする気もない。
ならば………。
「5、4、3、2、1、捕獲スタート!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉ―――――っっ!!!」」」
幾重にも重なる野太い声が神田とラビに殺到した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあっ!!!??」
妄想に精を出していたラビが間抜けな悲鳴を上げた。
探索部隊の白いコートでその場が埋め尽くされる。
振り下ろされたのは鈍い光を放つ剣や斧、槍や銛。
ガキィィィィンッ!!
煉瓦の地面にそれらの武器が突き刺さった。
マジ、死ぬんじゃねぇか?
砂煙が立ち上がり、風に流れる。
「なっ、いない!?」
「こっちだ」
素早く輪を潜り抜けた神田は突進してくる隊員に足払いを掛けた。
一人が派手にスッ転ぶとその後ろに付いていた連中は失速できず、将棋倒しになる。
すかさず乱れた輪から飛び出し、手近で剣を翳していた探索部隊の腕に手刀を叩き入れた。
「ぐわっ!?」
一時的な痺れに見舞われ、取り落とした剣を地面に落ちる前に拾い上げる。
「剣技で俺に勝てると思うなよ」
構えた刄が太陽の光に鋭く反射して、何閃もの光が瞬いた。
―――――キンッ!
鞘に収めると背後から数十人の悲鳴が上がる。峰打ちで、しかも急所は外しているのに五月蠅い奴等だ。
妨害は許可。
相手の武器を奪う事だって可能だ。
悪いがこっちだって必死なんだ。
神田は高く跳躍していち早くその場から撤退した。
普段から鍛錬を怠らない彼の足について行こうとする無謀な者はいなかった。
「くっ……仕方ない!こうなったら他のエクソシストだっ!」
「ラビを狙え!!」
「うぎゃぁぁぁぁっ!!!離せ、ボケェッ!!」
かくして戦いの火蓋は切って落とされた。
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