黒の教団編
姫君の策略
野っ郎―――――!!
マジ、終わったら覚えてやがれ。
顔骨変形するまで殴るぞ。
「ちっ、とりあえず隠れられる場所に………」
一緒にいる時間が多いせいか、神田に似てきたアレンである。
舌打ちや思考においてのぞんざいな口調は明らかに彼の影響だろう。
………腹黒いのは元々だが。
「マテールの街みたいな地下都市があればいいのに………」
入り組んだ家々の隙間に身を潜ませたアレンは溜息を吐いた。
そろそろハンター共が狩りを始める頃だろう。
最初の数時間はアレンが狙われることはないはずだ。
おそらく、あの場にいるエクソシストが標的となる。
彼等のイノセンス発動が認められない十二時間内は探索部隊などの格好の餌食だ。
神田との合流はかなりの時間を要するだろう。縛り上げられでもしたら尚更、厄介だな。
でも、絶対に負ける訳にはいかない。
仮に捕まりでもしたら、どちらかが何処の馬の骨とも知れない輩と一夜を共にしなければならない。
相手を殴ればいい話だが、コムイに薬を盛られたりでもしたら………うぅっ、考えただけで寒気する。
旅行も満喫するし、子供も授かってみせる。
アレンはグッと握り拳を固め、無人の住宅の窓を覗いた。
――住宅への侵入、破壊は許可。
ルールを思い出して、口元に歪んだ笑みを浮かべる。
僕はそんな安い女じゃない。
高額高値で売却済みである。
「殺り過ぎなけりゃオッケーなんだよね……ふふっ」
団服の裾を優雅に翻し、アレンは静寂に包まれた住居の扉を容易く開いた。
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