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黒の教団編
さぁ、ゲームを始めよう



『さて、それではお待ちかね、鬼を発表します!』



高らかに拳を上げたコムイに、群衆は静まり返る。


一拍置いてコムイが宣言する。







「ターゲットわぁぁ…………『白百合の君』!アレン・ウォーカー!!!」



コムイが叫んだ瞬間、爆発音のような雄叫びが轟く。



「「てめぇ、刈るぞ」」



ドスのきいた低い声で呟き、コムイの喉元には黒い刀剣と鋭い爪が突き付けられた。



「わぁ―――――っタンマ、タンマ!最後まで聞いてってば!」


「もう話すことは何もありませんよ」



にっこりと微笑む姿はまさしく白百合だが、オーラは黒百合だ。


それでもめげないコムイは危うい状態のまま言い放つ。



「ゆ、優勝賞品は先日の『裏・教団報』ランキング項目、『抱きたい人』No.1、アレン・ウォーカー!もしくは『抱かれたい人』No.1、神田ユウ!どちらかを選べます!いててっ、刺さってる!二人とも、ちょびっと刺さってるって!」

「コムイ、てめぇとはここで今生の別れだ」

「リナリー、ごめんね。少し後ろを向いててくれるかな?」

「ア、アレン君が逃げ延びた場合、ペアで行く豪華パリの旅二週間を用意してます!」



二人の武器がピタリと止まった。

その反応に満足そうに笑うコムイ。『悪い話じゃないだろ?』と顔に書いてある。



「神田と僕の共闘は有りですか?」



既に参加する方に思考を切り替えたアレンはイノセンスを解いて、脳内でルールを整理した。



「もちろんOKだよ。神田君がアレン君を捕まえて早々にゲームを終わらせることも可能だしね」

「僕等が逃げるとでも?」


銀灰色の瞳にはもはや豪華旅行しか見えていない。


溜息を吐いている神田も長期休暇に目が眩んでいるのは必須だ。


そうこなくては主催者としても面白くない。



「参加、してくれるね?」


黒白のカップルは不敵に笑った。



――臨むところだ。



コムイは再び、拡声器を掲げた。



「話が纏まったところで、ゲームを開始したいと思います!先ずはあと一分後、正午に鬼が逃走。その五分後に追跡開始です。ゲーム中に気になることがあれば無線ゴーレムで取り合います。医療班も待機してますが、殺り過ぎは駄目だからね。それでは、30、29、28………」


カウントが始まる横で、闘志を燃やす二人は手を取り合った。



「神田……必ず勝ちますよ」


「ああ……」


アレンの耳元に唇を寄せて、低く囁く。


「子供、欲しいからな」

「はいっ」



頬に口づけを受けて、アレンは無邪気に微笑んだ。



「10秒前………5、4、3、2、1、逃走スタート!」



アレンは煉瓦を踏み締めて、駆け出した。



「あ、言い忘れてたけど、鬼も十二時間経つまではイノセンス禁止だからね―――――っ!!!」


「っざっけんな―――――っ!!!」



怒号を発したアレンはそれでも時間を無駄には出来ず、全速力で駆け出した。




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