黒の教団編
生贄選抜
黒の教団には『裏・教団報』なるものがある。
過去に科学班の面々が社内報として正式に許可を貰った『教団報』は、コムイ室長の暴走によって一号で廃刊に追いやられた。
それに懲りず、今度は無許可で団員内の中でまことしやに発行を続けられていた。
もちろん、それに気付かないほど室長の頭は悪くない。
つまりは黙認されていると言う訳だ。
更に言えばそれを逆手に取るのがコムイ・リーという人間だ。
大々的なインタビューではなく、世間話を盗み聞きした記事には教団内で一、二を争うアイドル『白百合の君』についての事柄が掲載されていた。
―――最近の悩みは?
『休みが被らないんですよ。もう一ヵ月は逢ってないかも……』
―――今、一番欲しいものは?
『二人で過ごす時間が欲しいですね。後は……』(赤面)
―――小声で何かを囁くので聞き取り不可。
某エクソシストの話では御子だとか。
―――理想のタイプは?
『タイプも何も、彼しかいないに決まってるじゃないですか。あ、聞いて下さいよぉ。こないだ無線ゴーレムで………』
―――この後、およそ三十分の惚気話。
記者は涙を流し、死ぬ思いで聞いてました。
泣くぐらいなら聞かなきゃいいのに。
どうせ盗み聞きなんだし。
でも、そうだな………。
コーヒーを啜って、今月の『裏・教団報』を眺めた権力者は、悪戯を思いついた子供さながらのイイ顔をして、妹を呼び付けた。
愛妹のリナリー・リーは兄の企みを聞かされると負けず劣らずイイ顔をした。
『裏・教団報』の隅っこに記載された【何でもランキング】のとある項目のトップには一組のカップルの名前があった。
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